『かつて生身だった人。
これから生身ではなくなる人。
正に目の前で生身でなくなった人。』
「空の中」「海の底」に続き、自衛隊シリーズ3冊目、有川浩「塩の街」は、どきっとするような場面から始まっていく。
シリーズで文庫化されたのはこの作品が最後だけど、発表自体は一番最初。デビュー作だそうで。
街の機能だけじゃない。人々もその塩に侵されて、塩化していく――。
あーもう第1章だけで短編として十分に成立しちゃってるじゃん。人の生き様と愛を描く作品として。
切ない。悲しい。そして美しいじゃないか。もう半泣きになってるぞ。
ただ第1章だけでは「何が」「どうして」が見えてこない。第2章、いよいよ塩の本質が見えてきつつ、本格的に「主人公たち」の物語になっていく。
人類は滅亡に向かって緩やかに進んでいく。そこにたったふたり取り残された女子高校生と自衛官。
人類の未来ははたして。そしてふたりの恋のゆくえは。
このあたりがきっと有川さんの言う「ラノベ」のフォーマットにのっとってるということなんでしょうね。
やってることは人類の未来を守ることでありながら、描かれているのは実はせつないラブストーリーですから(^^;
恐怖、不安、絶望、そして恋。うーん、わかりやすい(笑)。
でもね、話、マジでおもしろいんだわ。すごいね。
『君たちの恋は、君たちを救う。』
・・
・・・
と、ひとつのエンディングを迎えた後、後編に相当する「塩の街、その後」がスタートする。
サスペンステイストの前編に登場した主要人物の、それぞれの心の物語。どう考えてもやっぱり全力のラブスーリー(^^;
そもそもの人物描写が巧いんだろうね、だからスピンオフの中でも自然に動き出しているような感じだ。
僕がこんなにひねくれた人間でなければ、きっと半泣きに加えてキュンキュンしてしまってたことでしょうね(超絶ほめてます)。
最後に著者あとがきを少しばかり引用させていただきます。
『好きな人を失う代わりに世界が救われるのと、世界が滅びる代わりに好きな人と最期を迎えられるのと、自分ならどっちを選ぶかなぁ』
さて、僕は。
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