[139]
遺産分割協議書の内容に問題がなさそう、ということでわたしはいよいよ相続の手続きを開始した。もう8月末、あれからすでに1ヶ月半が経過している。
取り掛かったのはマサさん名義の口座のある金融機関のサイトの巡回。検索するとそれぞれ「相続」のページがあることがわかった。当然と言えば当然か。
メイン口座のN銀行。
相続相談センターの電話番号が書かれていて、まずは電話しろということだった。
「相続の相談をさせていただければと」
『お悔みを申し上げます。それではこちらからご記入いただきたい書類、ご提出いただきたい書類のリストをお送りいたしますのでご返送をお願いします』
次はF銀行に電話。
「相続の相談をさせていただければと」
『お悔みを申し上げます。ホームページはご覧いただいているかと思います。そちらの内容を確認いただき、書類をひととおりお持ちいただければと存じます。店舗のほうの予約を取らせていただきます。ご都合はいかがでしょうか』
M銀行はウェブ上に届出ページがあった。ひととおりの入力を終えると、あとは郵送でのやり取り、ということのようだ。
基本的には現金化が終わっているものの少しだけ「何か」が残っているSN証券の口座についてもウェブ上で届出を行い、確認書類をアップロードした。
先方から確認のメールなどが届き、あまり頭を使わずに言われたとおりに手続きしていったら、無事相続が完了した――のだが、わたし名義の口座が作られていて、そこに「何か」が移動した、ということのようだ。
問題は何も考えずに手続したために、自分名義のアカウントにログインができなくなっている、ということだ。情けない話ではあるが、落ち着いたらコールセンターに問い合わせることにしよう。先送りだ。
Y銀行は窓口まで出向き、まずは口座の停止措置をしてもらい、相続関係の手続きのための書類は郵送で送ってもらうことになった。
さて、土地はどうしよう。マサさんの実家の近くに点在する小さな土地については、やはり売却の際に手続きをしてくれた現地の司法書士に依頼するしかないか。
せっかく打ち合わせをしたにもかかわらず古い内容で契約書を作成された経緯があるのであまり信用はしていないのだが、ほかに伝手がない。
『土地の売却の際にはお世話になりました。その父が死去いたしまして、土地の相続の件で諸々お手続きをお願いしたいのですがご対応可能でしょうか』
口が裂けても信用してないなどとは言えない。平静を装ってメールを出した。
あとはゴルフ会員権か。
そうこうしているうちに、生命保険が入金された。
運用されていたものもあったようで、予定よりも額面が大きくなっている。ありがたい。