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老人ホームを後にしたわたしは、続いてあっちゃんが入院している病院に向かった。
早く着きすぎてしまったのでコーヒー飲んでちょっと時間を潰し、面会可能時間になったことを確認してから、まずは入院病棟のナースステーションに立ち寄った。
「母がお世話になっております。入院に際して記入しなければならない書類があるように聞いているのですが」
「確認しますね」
待っている間、なんとなく周囲を見回してみる。
中央総合病院は、まさにイメージの中のピカピカの「大きな新しい病院」に見える。見た目で判断するのはどうかと思うが、少しばかり安心したのは確かだ。
「お待たせしました。こちらの書類一式に記入をお願いしたいと思います。病室のほうにご案内しますので、そちらで書いていただければ」
あっちゃんの部屋はナースセンターのすぐ近くだった。手術前日に転倒したということもあって、スタッフの目の届きやすい部屋に移動したのだという。
扉が半分開いたままの病室を覗き込むとあっちゃんが見える。
「あ、寝てますね」
「午前中もリハビリしましたからお疲れなのかもしれません。でも昼間眠っちゃうと夜が眠れなくなるので・・・息子さん、来てますよ!」
看護師さんは容赦なくあっちゃんを起こした。
「久しぶり。来たよ」
「あら」
寝ぼけているのか、何やら怪訝そうな顔をわたしに見せた。
「入院したって聞いたから」
「なんでもないと思うんだけど」
「手術したんでしょ。大丈夫」
「うーん」
自分の状況がやっぱり理解できていないのか、歯切れの悪い受け答えだ。
「みんなは元気にしてるの」
「それぞれ元気にしてるよ。足は痛くない?」
「うーん。なんでもないと思うのよ」
「また元通りに歩けるように看護師さんの言うこと聞いてがんばらないとね」
「そうなのよね。それでみんなは元気にしてるの?」
会話がぜんぜん進んでいかない。みんなは元気にしてるの、のくだりは最終的に4回繰り返されることになる。でも否定から入らないようにと教えを受けたばかり。
「それぞれ元気にしてるよ。だから早く元の生活に戻れるようにがんばらないとね」
書類に記入しながら転がらない会話を続けていると、ある瞬間からあっちゃんの返答が止まってしまった。
見やると再びベッドの上で眠りについてしまったようだった。
看護師さんのように起こしてしまうほうがいいのかとも思ったが、わたしには眠ってしまったあっちゃんを起こすことはできなかった。起こすのがしのびないとでも言うのだろうか、書き終えた書類をナースステーションまで届け、病院を後にすることにした。
「眠ってしまったので今日はこれで失礼します。引き続きよろしくお願いいたします」
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