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わたしたち家族にとっては喪中ということもあり、静かに始まった2026年である。
今年こそ、このまま静かであればいいと願っていたのだが。
1月5日10時すぎ。
会議中だったわたしはスマートフォンに着信があったことに気づいていなかった。
昼前に会議が終わり、まず目に飛び込んで来たのは妻からのメッセージだった。
『グッドライフよりTELあり。お母さん、風呂から出て意識喪失、救急車呼んで、隊員対応中に落ち着いて、意識も戻った。』
句読点の多さに慌てているのがわかる。
着信履歴も確認し、すぐに折り返した。
「先ほど母の件でご連絡をいただいたようなのですが」
『看護のスタッフに電話を代わります』
「お願いします」
『お電話代わりました』
「おおよそは家の者から聞いたのですが、状況は」
『お風呂上がりにドライヤーをかけていたときに、突然意識を喪失されまして』
他の老人ホームがどうかは知らないが、グッドライフでは入浴時間は午前中に設定されている。
『目を開けたままでこちらの呼びかけにも反応がありませんでしたので、すぐに救急車を手配しました。反応がないものですから、一時は最悪のこともよぎったんですが、足を高く上げて血流を戻したところ意識を取り戻されました』
「なるほど。それで今は」
『一応よしだ内科に救急搬送して検査を行いましたが特に異常なしの所見でした。一時的な貧血ではないかということでした』
「はい」
『今は自室に戻られてまして、昼食もすべて食べられてました』
あっちゃん、もともと貧血気味だったなと思い出す。
「それはよかったです」
『ご本人は意識を喪失されたことは覚えていらっしゃらないようです。ご心配のこととは思いますが、状態はスタッフが注視していきますので』
「お手数ですがどうぞよろしくお願いいたします」
通話を終えて最初に思ったのは老人ホームに入れておいてよかったということだった。
風呂上がりのトラブルなんて普通に起こりそうなことでもあるし、これがもしマンションでひとりだったらと考えてしまう。
孤独死なんていちばん想像したくない。
夜、あっちゃんに直接電話をかけた。いつものようにふわっとした聞き方に終始してしまったが。
「久しぶり。最近はどう」
『まあ普通にしてるわ』
「体調崩して病院行ったって聞いたから」
『なんかそうみたいなんだけど、ぜんぜん大丈夫よ』
スタッフさんからある程度のことは聞いただろうに、そのときのことを覚えていないのに加えて、直近の記憶があいまいということもあるか。
まあ意識喪失のその当日にこれだけ会話ができたことで、今日のところは十分だろう。
後日、正式な診断結果が伝えられた。「迷走神経反射による一時的な低血圧」だそうだ。
歳を重ねるといろいろあるな。
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