若竹七海「プレゼント」を読了。
世界一不幸な探偵こと葉村晶、その誕生の物語っていうか前日譚ってのかエピソード0というのか、若き葉村さんが探偵事務所で働き始める時期の事件を描く短編集。
葉村さんだけの短編ではないですが。御子柴くんも出てくる。
本作での葉村さん、やはり若いころから「巻き込まれ体質」でかなり不運です。最終話ではいきなりアタマ割られてるし。笑い事じゃないけど(^^;
というか、自分で巻き込まれに行ってるようにも感じます。なぜなら「いろいろ」と気づいちゃうから。
そう、気づいちゃうんだな。
気づいちゃうからこそ、はっきりさせないといられないし、だから巻き込まれるし、結果非常に不運なことになってしまう。
そんな根っこの部分が見えたようでとても楽しかった(あくまで読書体験として、ね)。
あ、もちろん物語そのものも切れ味鋭く、僕はほとんど「気づかなかった」です(^^;
ただいつものように、ざらりとした苦い感触が残る結末で、誰かにとって――それは葉村さんにとってであったり、犯人側であったり、被害者であったり、もちろん読者に対してだったり――つらくて苦しい。
でもこの苦さが後を引くの。
物語の本筋とは関係ないけど気に入った一節をちょいと。
『すべてを忘れるつもりだった。だが記憶は離れなかった。なにかを考えるたび、ひとは経験を呼び起こす。経験と照らし合わせて判断を下すのだ。記憶なしに考えることはできないし、思考なしに生きていくことはできない。』『(前略)~ことがあるのだ。これは事実ではないが、彼の中では確固たる真実と化していた』
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