2019年10月11日金曜日

錆びた滑車。

『冬、寒いのはいい。暗いのが嫌だ。』

葉村晶シリーズの最新作、若竹七海「錆びた滑車」を読了。

とにかく不幸で不運な探偵、なのだけど、今作でもその看板(?)には偽りはない。
物語はもらい事故で頭を4針縫うところから始まるし(^^;

その事故は調査中の事故ではあるのだけど、それをきっかけにしてさらにやっかいな調査に「巻き込まれて」いく。依頼という名の強制・・・まあ不運よね。

その中で交通事故の後遺症に苦しむ若者と出会う。事故当時の記憶を失っている彼に「自分がなぜ事故現場にいたのか知りたい」という依頼?をされてしまう。そしてその若者が突然不慮の死を遂げてしまう。探偵の選択は、そして複雑に絡み合った真相とは――というのがざっくりとしたお話。

おもしろいミステリーって、真実が明らかになる直前にページをめくるのをやめて、頭から読み直すことがある。
謎解きをしたいというケースだけでなくて、物語に縦横に張り巡らされた伏線をひとつでも多く見つけたいと思うことがあるから。

この作品もまさしくそうで、読み直し、登場人物の言葉や行動をもう一度確認して(この人誰だっけ?になってることもあるから)、自分の中で整理をつけてクライマックスに向かいたい。そうしてラストでより深く驚きたい。

そういう僕の欲求を、強烈に満たしてくれた作品でした。探偵・葉村晶のこれまでのことを知らなくても十二分に楽しめること請け合い。

余計なお世話だが、「友達だからぁ」という理由づけで、プロフェッショナルにタダ(あるいは「お友達価格」)で仕事をやらせようとするのは絶対にやめていただきたい。それも葉村が不幸になる理由のひとつよ。

・・・それにしても、寝ずに動き回って調査して、やっと寝入ったところに1時間おきに電話で起こされるってシーンが一番不幸だと思ったなぁ。そういうタイミングで電話してくる人って、自分のことばかり一方的でね(俺調べ)


おまけ。ちょっと刺さったフレーズアーカイブ。

『彼女は勝手に傷つき、しかも傷ついたのを私に知られて、さらに傷ついていた。なに一つわたしのせいではなかったが、後味は悪かった』
『目的のためでも手段は選ぶが、許される手段の上限も下限も自分で決めたい』


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