葉村晶シリーズの新作(といっても刊行は半年以上前だな)、若竹七海「不穏な眠り」を読む。
さーて今回の依頼は?
「出所した人を送り届けて」「幽霊の噂のあるビル警備をせよ」「盗まれた古書を取り返せ」「10年以上前に亡くなった人の知人を探して」の4本です。とサザ●さん的な言い回しをしてみました(^^;
はたしてこれは探偵に依頼すべきものなのかしらと思うようなのもありつつ、その依頼を請けることになる経緯そのものがなんとも不運で、相変わらず読んでて気の毒になる。笑っちゃうけど(^^;
たとえば2話目ではとりあえず、葉村さんが警備に入っためっちゃ寒い現場のヒーターの燃料が切れます。
3話目ではとりあえず、葉村さんはスタンガンで気絶させられます。話そこから始まります(^^;
4話目ではとりあえず、調査に行った家でいきなり首を絞められます。別の家ではいきなり出刃包丁を向けられます。
このようにめっちゃ不運ではあるものの、独白の中に漏れ出てくるある種の暢気さというか、その不運を楽しめているような達観っぷりが、なんとなく物語全体から悲壮感のようなものを和らげてくれてるのかな、などと思う。
だけど、それだけでは片づけられない、どうにもならない「不幸」さも重厚に描かれるわけで、それによってこちらの感情はざわめくし、この作品群の魅力になっているのだとも思う。
そういう意味では収録作品1話目の「水沫隠れの日々」がいちばん印象強かった。
「水沫隠れ(みなわがくれ)」ってなんだろ、って調べたら『水の泡に隠れて見えないこと』。なるほど騒動の内容はあくまで表面的な部分で、本質の部分はなかなか見えてこない、というミステリーの本質っぽい言葉だが、実際に解決の糸口になるのがリアルに水沫の底のほうだったからね・・・ネタバレしないように書くと何がなにやら(汗)。
その水沫の底の本質を発見する瞬間、「葉村さんツイてる?」と思ったんだけど、それは問題解決に対して幸運だっただけで、葉村探偵自身は当然不運だった(笑)。
そして「よーし解決」と思ったところでもうひとつ底に真実がある。それが怖い。心がぞわぞわする。こりゃ名作だ。
* * *
余談。
表題作「不穏な眠り」の中で、「ダイヤ菊」という銘柄の日本酒が登場する(事件とは特にかかわりがない)。いわく『小津安二郎が愛した酒』。
そんなうんちくもつゆ知らず、某ゴルフ場のレストランでティーアップしたボールが3つに見えるほどに飲みまくった記憶が蘇った。懐かしい。
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