2015年6月10日水曜日

プロジェクト・サーティ (6)自責

枕元を探ってスマートフォンを見つけ出し、時計を確認する。アラームをセットしなかったおかげで目覚めたのは――いや、薄目を開けただけだが――普段なら始業時刻になろうかという時刻。
休暇を取っておいてよかった。とてもじゃないがこの酒の残り方では仕事にならない。緊急の仕事がないかだけ、メールチェックをした。貧乏性というか心配性というか。
残った酒を理由にして、また目を閉じた。

眠りに落ちるこの瞬間だけでも余計なことは考えたくない。そう思えば思うほど、やはり夕べのことがフラッシュバックする。

SBで俺がとった態度は良くなかった。後悔、あるいは自責。

あのとき確かに矢野の物言いが疎ましいと思ってた。一度疎ましく思ってしまうと、甲高い声も耳障りになる。
もちろんそれだけが理由ではなく、いろいろなことが頭の中で動いていて、耐えられなかった。

それでもやはりあの席の立ち方は、ない。

だからと言って、改まって謝ることはきっとないだろう。仮に謝ったとしても「何のこと?」と返されるのが関の山だ。
謝らないがゆえに、この負の記憶はまた小さな澱となって積もり、そしてことあるごとに俺の心の中で泡立つことになるのだろう。

あいつのことは決して嫌いではないのに。いや、むしろ大事な友人のひとりだと思っているのに。
仕事をするようになってできた知人の中で、友人と呼べるような存在になるのは稀有なことだ。なのにいつから疎ましくなってしまったのか。なぜ、明るく押し出しの強い男という印象が、気配りのないがさつな男ととらえるようになってしまったのか。

メールをもらっただけで、あんなに気が重くなってしまったのは、いったい。

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