夢の国。そこで働くのは夢を描ききれない者たち――。
千葉方面のあそこ“じゃない”遊園地――設定としては国内資本の電鉄系ってことになってる――を舞台にした、真保裕一「遊園地に行こう!」を読む。
「デパートへ行こう!」「ローカル線で行こう!」に続く「行こう」シリーズ3作目。
心と体の傷が治りきらぬままインフォメーションに立つ案内係。
やりがいとともに将来への不安も抱えながら踊るダンサー。
深夜のパークで設備点検を受け持つ電気技師。
それぞれに過去の出来事を抱え、将来への不安も募らせながらも、“魔女”と呼ばれる年配スタッフとの関わりの中で、それぞれに新たなステップを踏み出す。
という、いわゆる「お仕事小説」な部分が前半戦。
登場人物が出そろったところで、園内で不審な事件が発生する。ここからが「サスペンス」のお時間。
犯人は。その目的は。
パッセンジャーの安全とパークの信頼の天秤。
伝説的スタッフである魔女の本当の姿とは。
・・
・・・
僕自身、あんまり遊園地だとかテーマパークだとかで盛り上がるタイプの人じゃないもんで、舞台裏を描くようなお仕事小説パートは、「ふーん」レベルだった。
その気分を引きずったのか、サスペンスパートもあんまりドキドキしなかったかも。
いや、サスペンスそのものではなく、魔女の正体がわかってしまってたからかな。思いっきりネタバレしますけど、あんなにしっかりプロローグに書いてあれば、そりゃあ僕レベルの読者でもわかっちゃうってば。
というわけでぜんぜん盛り上がりませんでした、かというとそうではなくて、全体のまとまり、あるいは起から結までの滑らかさみたいなものが、すばらしく心地良かったんだよね。
それこそ遊園地に行ったときのような楽しさが詰まってたように思います。
それが夢物語であろうとも、そんなことがわかってても、楽しもうとするから楽しい。それが遊園地だもんね。
――ちなみに僕のワンダーランドはスタジアムとアリーナとゲレンデです。
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