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そんな折、ながいきセンターのセイコさんからメールが届いた。
『3月26日にお母様のところに伺いましたが、先月よりも物忘れが進んでいるようです』
『家の中は散らかっていましたし、果物なども腐らせているようでした』
『買い物に行かれても同じものを繰り返し買ってしまうのか、ミニトマトが大量にありました』
2月に自分の目で見た様子よりも、さらに生活が荒れているということなのか。
それにしてもなんだろうミニトマトって。やたらに飲んでる野菜ジュースじゃないけど、食欲なくてもビタミンは、みたいな意識がどこかにあるんだろうか。
『ご本人は調理はしているとおっしゃっていますが、その様子はあまりなく、カステラやパンなどすぐに食べられるものがテーブルの上にありました』
買い物に行く、献立を考える、調理をする、食事をする、片付ける――そうしたサイクルが崩れると、生活のリズムそのものも一気に崩れてしまうんじゃないか。
セイコさんも『刺激のない生活で物忘れが進んでいる』、と。
それ以外にも、薬の飲み忘れで治療が継続できてないとか、通院そのものを忘れているといったこともあるようだ。セイコさんが改めてクリニックの予約を4月2日に取り直してくれたそうだ。
そしてセイコさんからのメールはこう結ばれていた。
『施設入所の方向でSS社のイワキさんとやり取りされていることは聞いています。自宅の売却には息子様のお力が必須であり、急がれたほうが良いと思います』
心配は尽きないが、心配だけしててもしかたがない。少なくとも施設に入るまでは健やかにいてもらわないとならない。
わたしはあっちゃんに電話をかけた。4月1日のことである。
「元気?」
『だらだらしてるばかりで。今日もマサさんのところ行かなかったし』
これはもしかしたら、ずっと行ってないのではないだろうか。
「薬はちゃんと飲んでる?」
『飲んでるわよ』
「セイコさんから飲み忘れてるって聞いてるけど?残り何日ぶんあるか数えてみて」
『10日分』
「明日病院だからね。10日分あるってことは飲み忘れてるんだよ。明日は忘れずに病院行ってね」
声だけの印象だけど、やはり弱ってる、という感じがする。とにかくちゃんと通院は続けてもらわないと。
前の日の電話だけじゃ心許ない。翌4月2日の昼にも電話をかけた。
「今日病院の日だからね」
『そうだったかしら?』
「先月の25日の予約を忘れてて、セイコさんが予約取り直してくれたんだよ」
『そうなの?行くの忘れてたことなんてあったかしら。どこの病院?』
「△△病院だよ。いつも通ってるところ。午後4時の予約だから、今から準備すれば間に合うでしょ」
通院、ちゃんと行けたかな。行けてるといいな。
そして数日後。
あっちゃん、マサさん、それぞれとSS社との面談の日がやってきた。
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