トスが上がる。
アタッカーが跳ぶ。
ブロックが待ち構える。
どうなる。どっちだ。永遠のような一瞬の静寂。
打ち抜くのか。止めるのか。弾くのか。食い止めるのか。
爆発するようなスパイクの音が響く――。
まるで最終回にヒーローが宿敵と必殺技を打ち合う、まさにあの場面が幾度となく繰り返される。
あの一瞬に選手たちは積み上げてきた技術を総動員し、相手との駆け引きを繰り返しているのだろうと思う。テレビ画面を見ている僕たちにはそのことはわからない。
でも、刹那の攻防の激しさは十分に感じ取ることができた。言葉を失うほどの壮絶な勝負だった。バレーボールがそういう競技だということを改めて感じさせてもらった。
勝ったイタリアにとってはもちろん、敗れた日本にとっても歴史的な名勝負だった。
ITA 3(20-25,23-25,27-25,26-24,17-15)2 JPN
後方伸身2回宙返り2回ひねり下り、いわゆる「伸身の新月面」。岡がひねりを終えて着地に向かうその一瞬、空中で止まったように見えた。おそらくは期待と興奮が作り出した錯覚なんだろうけれど、本当にそう感じたんだ。だから間違いなく着地は「止まる」と。
橋本大輝の地面に刺さるような着地や、内村航平の地面を足裏でつかむような着地とも違って、まさに月面に降り立つようだった。
出場8人中6人に大きな減点があったのは確かだけれど、あの出来栄えは奇跡じゃない。
[1]JPN OKA S
その瞬間、人間は宙を舞った。遥か6メートル25センチという高さを。
美しいものを見せてもらった。
[1]SWE DUPLANTIS A 6.25WR
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