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ひとつはゴルフ場の年会費の請求書。去年聞いたとき、マサさんは「ゴルフはときどき行ってる」と適当なことを言っていたけど、あっちゃんは「会員権は売った」と言っていた。実際にはまだ持ち続けている会員権が存在しているということなのか。しかも会費は2年分の請求が来ている。金額もそこそこ大きいし、とにかくこれは持ち帰って改めてゴルフ場側に確認してみるしかないな。わたしにはこの請求書だけでは事情がわからない。
次が通信販売で購入したと思われる野菜ジュースの請求書。封筒には「督促」の文字がある。この野菜ジュースこそ、溜まりに溜まった空き缶のゴミの元だ。
「野菜ジュースの代金、払った?」
「払ってるはずよ」
督促の請求書が届いていると、もともとの請求書と合わせて2枚の同一の請求書が存在することになるから、実際にどうなっているかはこれだけではわからない。
問い合わせたほうが早そうだ。
「請求番号○○なんですが、お支払いはさせていただいていますか?」
『いえ、お支払いは確認できていません』
やはり。
「そうでしたか。遅れて申し訳ありません。請求書に書かれている支払期限を過ぎているようなのですが、この請求書で支払いは可能でしょうか」
『はい、その請求書でお支払いいただけます』
「ありがとうございます。本日支払い手続きいたしますので」
「やっぱり払ってなかったよ」
「そうなのね。いやだわ払ったつもりだったのに」
「大丈夫、後で支払っておくから」
「じゃあこれも」
あっちゃんが差し出してきたのは、趣味の茶道の雑誌の代金。定期購読してるのか。
通販、危ないな。モノが届いた時点で意識の上では「完結」になっちゃうからな。本当は「支払うまでが通販」なんだろうに。
そして一番まずそうな請求書が見つかった。それは「住民税」。
固定資産税がマサさん名義のF銀行のFB口座からの引落になってるのは確認してるんだけど、住民税はそうじゃないのか。
年間で4回の支払いが必要らしいんだけど、督促の請求もあるし――差し押さえなんて物騒な単語も書かれている――何が何やら。書類だけで判断するのは危険だ。これは区役所の窓口まで行って聞くしかないな。
今日が平日でよかった。
「税金の支払いができてないみたいだから、区役所まで行って聞いてくるね」
「そうなの?」
「時間かかるかもしれないから、お昼は食べておいてね」
マンションの近くのATMで、預かっているN銀行の口座から少し余裕をみた現金を引き出し、それを持って区役所に向かう。
時期的に税金関係の部署は混雑していたが、幸いなことに住民税の窓口はさほどでもなかった。
「実は本人が昨夏から介護施設に入っていて、郵便物の確認ができず支払いが滞っていたようです。どこまで未納なのかそれもわからず、お手数ですがご確認いただければと思って伺いました」
「確認してまいりますね。ちなみに今日来られた方は」
「息子です」
待っている間、窓口の周囲に貼られているポスターを眺めていると「便利な口座振替で」というものを発見。住民税もインターネット経由の登録で口座引落にできそうだ。
そのポスターをスマホで写真に収めた。
「令和5年度の2期から4期までの分が支払われていないですね」
「わかりました。今この場でお支払いさせていただきたいのですが」
滞納による追徴もなく、無事納税が完了した。
「人が生きてく上で逃れられないもの」に数えられる税金。まさかこんな形で実感することになるとは。いずれにしても住民税も口座引落に変更しないとな。
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