2024年8月20日火曜日

名探偵のままでいて。

冒頭の1行目である。

『今日は青い虎が入ってきたんだ、と楓の父親は言った』

意味がわからなさすぎて困ったww
だけど、これが見事に名探偵の「人となり」を表すのに十分な1行目だった。理解して、そして唸った。なるほど。

というわけで、小西マサテル「名探偵のままでいて」である。


「名探偵」であるおじいちゃんはレビー小体型認知症を患っている。私自身もよく知るアルツハイマー型とはタイプが違って、簡単に言えば「しゃきっとしている時間とそうでない時間の波がある」「幻視を見る」らしい。
その「しゃきっとしている時間」に日常の謎(に限らずかな)を解明していく、リアル安楽椅子探偵ってところか。

でも、よく進めていくと、それだけではないような気がして。

タイトルの「ままでいて」の部分に家族(特に語り部となる孫娘)の、大きな希望が込められているように感じた。
だから、単純な安楽椅子ミステリーというよりもむしろ、祖父と孫の物語、そんな気もして。

連作の中で読者に提示されていた小さな事実の積み重ねが大きなうねりとなっていく中で、ことさらにその部分が強調されていたようだ。まさかの大サスペンス!

謎解きの面白さ、ヒントの散りばめ方、魅力的なキャラクターと会話劇の楽しさ、伏線とどんでん返し――「やさしい」ミステリーだったなと思いました。いい読後感です。


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