2024年8月23日金曜日

翳りゆくひと。[052]


[052]

メールを送付してしばらくした後、それを補足する形で電話でもシルバーサポート社(SS社)のイワキさんと話をした。

もちろん本人たちの状態の確認が最重要な点にはなるのだが、それ以上に具体的な「資金」「資産」あたりの確認が多い。
カネの話は下世話だろうが何だろうが、それこそが現実なのだ。

ちなみに手持ちの金額について、わたしは実際よりも若干少なめに回答した。そのほうが正直なところ安心だったから。

その後SS社との調整を始めたことについて、ながいきセンターのセイコさん、さくら老健のオオヌキさんにメール連絡をしたのだが、それぞれすでにイワキさんから随時報告をもらっているとの回答がきた。
同時にふたりの入居ということになると、連絡・報告するだけでもひと仕事。当然の対応だと言ってしまえばそれまでだけど、こうして細かく連絡を取り合ってくれるだけで十分助かる。

そしてあっちゃんにその旨を連絡した。

「マサさんと一緒に暮らせる家のことだけど、間に入っていろいろ調整してくれる人と話をしてるから。セイコさんに紹介してもらった人だから大丈夫だよ」
『そうなのね。全部任せていいかしら』
「もちろん。いいところが見つかるようにするね」

この日は意外にもあっさりと、住み替えに対して前向きに答えてくれた。ちょっと拍子抜けでもある。

3月半ばになってSS社から「資料」がわたしの元に届いた。
が、中身はいくつかの老人ホームのパンフレットだった。

ひとつひとつめくってみるものの、正直ピンとこない。
だってどれも綺麗な写真ばかりだし、わかったのは送ってもらったのは「住宅型老人ホーム」と「介護付き老人ホーム」の2種類だった、ということぐらいだ。
マサさんのことがあるので、「住宅型」では厳しいだろうなというのは想像に難くない。

何より費用のこと。イニシャルコストとランニングコストの比較が、このパンフレットだけではなかなか読み取れない。もちろん知識不足が最大要因なのはわかっているのだが。

「いろいろな施設があるというのは理解いたしました。そしてなんとなく介護付きがいいのだろうとは思いますが、いかんせんパンフレットだけでは何とも言いようがないというか、判断ができません」
「費用面もちょっと比較ができないので、イニシャル、ランニング含めて、プロの目線でもう少し絞り込んでいただけとありがたいです」

資料の受領確認の電話で、少し厳しい物言いになってしまったかもしれないが、わたしもビジネスモード。複数の候補から選択するためには、それなりにやるべきだと思っていた。

「御社と話をさせていただいていることは母にも話しておりますので、必要に応じてご対応いただければと思います。ただ、直接コンタクトされる際は少々心配もあって」
『一度お母様のほうをご訪問させていただきたいのですが、ながいきセンターの方に同行いただくということでいかがでしょう』
「セイコさん同席ならば問題ないです。お願いします」
『承知しました。お父様のほうはマンションの売却の意思確認も含めて・・・』
「電話はさすがに無理だと思います」
『ではさくら老健さんと日程調整して、直接伺うようにいたします』

どういう面会になるのかは想像もできないけれど、スムーズに進んでほしい。

わたしは祈るような気持ちだった。
何せボールはこちらにはない。今できることは何もないのだから。

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