ここまで来るともう「タレントが小説書いた」みたいな感じじゃなくて「ときどきアイドルもやってる作家さん」(ファンのみなさんごめんなさいね)というレベルよね、だからちゃんと読まないとね、ということで手に取りました。
加藤シゲアキ「オルタネート」。
「オルタネート」っていうのは作中に登場するSNSの名称だけど、このネーミングの持つ意味こそが物語の核にちゃんとつながっていくというのは、すんごいセンスだとまずもって唸らされた。
- 交互に起こる
- 交流する
- 代理人
もちろんそれだけでなく、ちょっとした言葉のチョイスも「おおっ」って感じで(←説明できないんで許して)。
常に見られているという立場の筆者だからこその感覚なんだろうか、そんなことも思う。
物語はオルタネートを取り巻く高校生たちの群像劇。登場人物も多いけど、細かく分割された章立てのおかげで混乱することもなく読み進められた。
いやむしろ、高校生という移ろいやすい季節の中で、新生活に飛び込んだ1年生と将来をも考えなければならない最上級生のように学年ごとに時間の流れは違うという部分の表現が、より物語に厚みを出してくれているような気さえする。
その中でいち読者としては、オルタネートをやらない/やれない登場人物のほうに、何か惹かれるものがありましたね。ただ、その彼らも「やってないがゆえに翻弄」される部分もあって、現代社会の縮図と言うか。
「青春」ってさ、続いていくべきものだから、わかりやすい結末やエンディングがあるわけではない。でも、物語として、オルタネートによってもたらされた仮想的であるはずの人と人とのコネクト――関係性が、実は狭かったリアルというクライマックスに収束していく流れは素晴らしいとしか言いようがない。
そしてそれを象徴するような「祝祭」の章は、むしろ美しかった。
・・・読み続けたい作家がまたひとり。
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