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わたしは、その後もいぬかいのサダカタさんとはメールで継続的に連絡を取っていた。
マサさんもあっちゃんも、プロの目から見て「自宅でおおよそ問題なく生活できていると思う」というコメントをもらってひと安心していた。
マンションにも週イチぐらいのペースで上がってくれているようで、看護師でもあるヨコミツさんが服薬指導をしてくれたり、あるいは古新聞を少し片づけてくれたりしているとの話を聞いて、マサさんあっちゃんにとって「頼れる人々」になってくれてるのだとすればありがたいなと思っていた。
一方で現段階では「年齢的には健脚と見受けられます」というふたりだが、近い将来、マンションの階段がリスクになることは十分に考えられるので、その場合なにがしかの施設を考える必要も出てくる、という話ももらっていた。
こういう話は自分で中途半端に調べるより、プロから教えてもらったほうがわかりがいい。わたしは自分の知識不足を伝え、教えを乞うていたのだ。
実際に施設に入るきっかけとなるのは、たとえば脳梗塞や骨折で入院後に自宅の階段を上れないケース、そもそも自宅介護ができないケース、認知症の進行+衛生面の問題、徘徊、独居といったケースなどが多いそうだ。
その上で、施設には「特養」「グループホーム」「介護付き有料老人ホーム」「老健」などなどさまざまな形態があると――実際に検討するのであれば、本人たちの状況はもちろん、費用のことも考えなきゃならないし、極端に言えば「今考えてもしかたないな」というのがわたしの正直な気持ちだった。
言葉は悪いが、なるようにしかならん、と。
そんなある日、仕事中のわたしにあっちゃんから電話がかかってきた。
『ケーブルテレビの人が来てね、インターネットとセットにするとお得だからって』
『申し込もうと思うんだけど、どう?』
先日の「ガス代を電気代におまとめ」の件を思い出した。ある意味答え合わせだ。
せっかく整理した支払いが、また混乱してしまう可能性が出てくるのは避けたい。実際にお得かどうかの問題じゃない。
「いや、それはたぶんお得じゃないから、断って」
『あらそうなの?』
「うん。お断りでお願い」
でも事前に連絡もらったのはすごく良かった。
「でも連絡してくれてありがとう。これからも何か買ったり契約したりする前に僕に必ず連絡してね」
これを続けてくれれば安心なのだけど。
そうか。安心か。
こうしていろいろやってるのはマサさんあっちゃんのためというより、どこかでわたし自身の安心のためなのかもしれないな。
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