2024年3月6日水曜日

犬も食わない。

一度読んでみたいと思ってた2人の作家が共作してる、となったらそらまあ読んでみますわね。うん。
たとえそれが「お前には似合わん」という自覚のある恋愛小説だったとしても(^^;

そんなこんなで尾崎世界観・千早茜「犬も食わない」を読了。

読み始めて最初に思ったのは、両作家とも書きっぷりが好み、ということ。
リズムというか、言い回しというか、肌に合う。すぐに次を読んでみたいと思ったし。
千早さんがフォーシームの剛速球、尾崎さんがツーシームの速球、なんて言ったら伝わるかしら(ムリ)。


『昔から飴を噛みくだく癖があった。もっと甘さが欲しくなって噛みくだいて、あっという間になくしてしまう』という女。
『廃棄物を引っ張ってると気が紛れる。誰からも必要とされなかった物が金に変わるということに励まされる』という男。

意外な形で出会ったふたりの、不安定な生活がそれぞれの目線から綴られていく。

野球の試合に相手を思う、男。
友人の愛犬に相手を思う、女。

違うけれどもある意味似た者同士のふたり。共作だということをすっかり忘れてた!!

このふたり、読者である自分とはぜんぜん違うタイプだとは思うのだけど、衝動とか怒りとか、あるいは怠惰とか、自分の中にも間違いなくそれはあって、共感と反発のような感情が同時に湧いてきて、何と言うか・・・ちょっと困る(^^;

そしてたどり着く場所は、やっぱり“そんなん、犬も食わんわ”な場所。

こういう、違う立場から描く共作?共同執筆?ってどこまでプロットを決めてんだろ。
むしろ何も決めてないほうが、本当の恋愛みたいでドキドキしちゃうじゃん?――などと年甲斐もなく思ったり、ね。
その意味では巻末におふたりの対談なんて収録されてないほうが良かったかも。

そんなこんなで、たいへんドキドキと楽しい読書時間でした。うん。

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オマケ。印象的だったところをちょっとだけ引用。
『暗闇は簡単に光に吸い込まれる。闇の中に居れば光を感じるのに、その逆がないのは不公平だ』(尾崎)

『約束もなく、ただ、その日、その日を一緒に過ごす。それだけのことが人間同士だとうまくいかない』(千早)

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