山口恵以子「夜の塩」を読む。
没入とでも言うんだろうか。ふと気づけばすごい時間が過ぎていた、そんな一冊だった。
東京の街に都電が縦横に走ってたころの話。
突然の母の死の裏に隠されたものを探し求め、夜の世界――そこは料亭という名の、政財界の魑魅魍魎が跋扈する世界――に身を投じる元高校教師の主人公。
ふと「黒革の手帖」が頭をよぎる。
時代背景とかあのころの「東京」とか、政治とか「夜」とか、たばことか喫茶店とか、食事とかファッションとか、思いを巡らせれば巡らせるほど、物語の“解像度”が上がっていくような感触があった(もちろん設定の時代はリアタイムではないものの、昭和の空気感は知ってるもの)。
いわゆるサスペンスなので、これ以上は話の中身は書かない。ただ、主人公の良くも悪くも静かに変化していく様が、恐ろしくもあり頼もしくもあり、そしてなぜだか不安でもあり。
・・
・・・
夜の塩、というタイトル、直接的には料亭の入口に置かれた盛り塩のことを指すのだろう。
だろう。
“家の中に邪気を入れない”、か。
・・・いやいやいやいや(笑)。
当然「そうじゃない」から(笑)と書いたんだけど、読んだらその感触もわかってもらえるかな、なんて思ったりしている。
そういえば象徴的に盛り塩が崩れているシーンもありましたな。
本当にぐいぐいと読ませてもらいました。とってもとってもおもしろかったです。
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