「おもしろかった?」と聞かれたらちょっと答えに詰まる。
でも「見たほうがいいかな?」と聞かれたらそれはもう「ぜひに」と即答する。
という感じの、今回今さらながらに見てみた映画は「ある男」です。
再婚して一緒に暮らしてた旦那さん、自ら名乗ってた名前の人ではないということが死後判明する。私たちが愛していたあの人はいったい誰だったの――依頼を受けた弁護士が、そのある男の素性を探していく。という、あらすじです(雑)。
変身願望。あるいは逃避願望。
みんな多かれ少なかれ持ってる願望じゃないのかなぁ。
少なくとも僕には「ある」。
アイデンティティ。そして出自。
自分はいったい何者なのか。どこから来てどこに行くのか。
漠然とした形をなさない問いと不安も、僕の中にはある。
そんなふうに日常では確認しない感情や感覚に触れることは、そこそこしんどい。
『知らなくても良かった』
物語の終盤、「妻」そして「依頼人」役の安藤サクラのセリフだ。それはこちらの思いともシンクロする。
その安藤サクラ。冒頭でちょっとした作業をしながら涙をこらえる/こらえきれないシーンが強烈だった。あの数分間は瞬きを忘れるような時間だった。
共演の妻夫木聡、窪田正の演技も身震いするような――特にこの作品の窪田正孝は何かこう、それこそ「別の人間になってしまった」かのような感じだったな。まさにこの映画の主人公のひとりとしてピッタリだった。
うん、これぞ邦画。これぞ日本の役者たち、そんな一本でした。
「おもしろかった」とはあまり言えないんだけども(^^;
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