“消防士はギャンブルしない。誰の命も賭けない。”
五十嵐貴久「命の砦」を読了。
この小説の場合、火災が起こることだけははっきりしてるので(だって主人公が消防士だもん)、物語の冒頭に「新宿地下街」「クリスマスイブ」「非番」といったキーワードが出てくるだけでもうぞわぞわしてしまう。悲劇へのステップとでも言うのか。
(ネタバレしちゃいますけど)そこにあったのは、悪意という意思だ。
これまでの「違和感の放置」が原因だったケースとは意味が違う。本来なら問題ないはずなのに!テロ許すまじ。
そして情報不足という大問題(@_@)
巨大化してしまったがゆえの大都会の脆弱性とでも言おうか。
高層タワーより客船より、新宿地下街のほうが(自分にとって)リアルだとというのも圧倒的に恐怖を加速させる。
ホラーとは違う、もっともっと現実的な、いわば肌触りのある恐怖。
しばらく地下街、怖くて歩けなくなりそう(涙)。
もう序盤からクライマックスですよ!
読者にも緊迫感に負けないメンタル要求されますよ(笑)。
その新宿地下街。事態が悪化いくにつれて、頭の中に描いていた地図が混乱してくる(リアルで歩いてても混乱するよね、あそこ)。この人たちはいったいどこにいるんだ、どこに向かってるんだ・・・でも、それを正確にとらえることに意味があるとは思えなかった。だって、それこそが「パニック」で、だからこその没入感だと思ったから。え?違う?
・・
・・・
そして本当のクライマックス。
物語は複数の場面が並行して描かれていくんだけど、場面転換が頻繁になって各章の区切りが短くなる。登場人物それぞれの、カット割りが忙しい。読者が息をつくヒマを与えてくれない。
今作も、文字で綴られた壮大な映画を見せられたような気分です。
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