下村敦史「同姓同名」を読了。
もともと気になってた一冊ではあったものの、『ビブリオバトル3冠!』というニュースを見てしまったらそらまあすぐに読みたくなっちゃいますよね。
ビブリオバトルとは、という話はコチラに書いてます。ご参考まで。
とはいえ、物語の内容自体はぜんぜん事前情報を入れてなかった。
登場人物がすべて『大山正紀』という人物で、それにまつわるあれやこれや、ということで設定だけで想像してたのはもう少しコメディな内容だったんだけど・・・。
実際には冷たく、そして恐ろしい物語だった。ホラーということではないのだが。
読み始めて最初に思ったのは「SNSやべぇ」。
文字だけで伝わらないという大前提含め、こんなことが起こるのか、という「知ってたけど目をつぶってた部分」を強烈に突きつけられたというか。
こうしてネット上に感想を書くのにも、どこかに恐れが、ある。
大山正紀という複数の人物に加えて、さまざまなモノを駆使した叙述トリックの極みではある。すんごいミステリーなのは間違いない。
当然ながら「これは誰だっけ」で混乱するんだけど、それが解けていく様もお見事。
混乱しすぎないようにてとても丁寧に書かれているということも書き添えたい。
ただ、本当に言いたかったのは、おそらく、SNSを中心にした、正義感に名を借りた誹謗中傷へのアンチテーゼではなかっただろうか。
被害者が加害者にいとも簡単に変容してしまう――。
「今」というそうした社会に生きるわれわれにとって、まさしく「そら恐ろしい」物語だった。
『コロナの蔓延で自粛を余儀なくされてから、理性や道徳(モラル)で押さえていた人々の攻撃性があふれ出した気がする(中略)誰かが自分たちの苦難を訴えただけで袋叩きに遭う。笑顔の写真一枚が炎上する。』
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