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7月26日午後、わたしのスマホに待っていた着信がある。
『SN証券のタカハシです』
「今日はお忙しい中ありがとうございました」
『ご本人の意思が確認できましたので、処理を進めます。8月3日に指定されている銀行口座に振り込みをいたします』
「本当ですか!?ありがとうございます!」
思わず言葉が跳ねてしまった。
実際にマサさんの確認がどう取れたのか、それはわからない。もしかすると、本人のところまで出向くことが「アリバイ作り」だったのかもしれない。いずれにしても早い対応をしてくれたタカハシさんとSN証券に感謝である。
これでマサさんが貯めたお金を、マサさん自身とあっちゃんのために使うことができる。
細かいことだが、証券口座そのものは資金ゼロで残存し、そして振込先はもともと指定されていたN銀行の口座になるそうだ。
N銀行の口座は新聞代とか保険代とか細かいものが引き落としになってるものの、日常生活には使ってない口座。これを通帳ごとわたしが預かってしまえば、今後いろいろと都合がよさそうだ。
なんだかんだ言っても、やはりカネさえあれば――わたしはすっかり大仕事を終えたような気分だったが、大切なのはまだまだここからだ。
時間を前後してさくら老健のオオヌキさんから、入所日が8月3日の朝に確定したとの電話連絡が入った。
平日だが前日から現地に行かなければならない。少し早めの夏休みを2日間取ることにしよう。いつものビジネスホテルも押さえなきゃ。
わたしはよしおか病院のヤマモト看護師にも確認の電話を入れた。
『当日は朝9時に受付までおいでください』
『介護タクシーをこちらで手配しておきます』
『入院費用のほかに、オーダーで作った装具、腰のコルセットですね、その代金を病院でいったんお預かりすることになります。その費用は区役所で手続きしていただければ保険で戻ってきますので』
こまごまといろいろやらなきゃならないことがある。わたしの頭の中は、またお仕事モードになっていた。
そうだ、肝心なところ、あっちゃんに連絡しとかなきゃ。
「もしもし。あのね、マサさんの退院が8月3日に決まったよ。その後は老健っていうリハビリの施設に入ることになったから」
『そうなの?リハビリならよしおか病院でもできるでしょ』
「病院だから、次の患者さんを入れなきゃならないから、治療が終わったら移らないと」
「そうなの?」
『だから前の日の2日にそっち行くからね。あと、今度のところは洋服とか用意しないとならないから、メールでリスト送っとく。用意できるものがあればお願いね』
以前は普通にキャリアメール使えてたけど、最近はどうだろう。
「ところで、今の保険証、有効期限が7月までなんだけど、新しい保険証って届いてる?」
『まだ来てないわよ』
それは困った。8月分の入院費用も払わなきゃならないのに。
わたしは区役所の保険年金課に電話をかけた。
『はい、新しい医療保険証は7月14日に一斉投函しています。黄色い封筒です。通常ですと翌日には届いているはずです』
「あの、もし万が一紛失してしまった場合の再発行は・・・」
『被保険者の本人確認書類、任意書式の委任状、それから窓口に来た方の本人確認書、これが揃っていれば即日発行可能です』
それなら最悪前日に再発行できる。よかった。
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