2021年6月22日火曜日

波濤の城。

“安全神話は絶対じゃない。”

消防士・神谷夏美シリーズ2作目、五十嵐貴久「波濤の城」を読了。
前作「炎の塔」がとってもエキサイティングだったので、たまらず購入しました。今度の舞台は巨大な客船=城。つまり海洋パニックが描かれます。


ネタバレしちゃいそうなので以下ご注意くださいませ。

大型台風が迫る中、航行を続ける大型客船。
オトナの事情を抱える船長の判断は「避難せず」――となると、この海洋パニックの原因となるのは台風だとしか思わないじゃないですか。

ところが、奇妙な音と異臭という意外なトラブルが表面化してきます。予想外の出来事にいったい何が・・・・ってこちらは揺さぶられてしまうわけですよ。いやー、やられたーと思うわけです。この時点ですっかりのめり込みましたね(^^;

そしてそれをきっかけとして次々に・・・。きゃぁぁぁぁ!

すべからく交通とは安全第一であるべし、と再認識しますね。
ちょっとの遅れでガタガタ言わないのよ(笑)。

今回も登場人物は多く、なかなか覚えるのが大変(笑)なんだけど、状況がピンチになればなるほどその人物の立ち振る舞いというか「素の部分」が表面化してきて、脳内で彼らの姿が見えるようになってくる。

そしてもちろん主人公の神谷夏美。前作よりもかなりたくましくなってるというか、まさに八面六臂の活躍を見せる。それは彼女の成長の証でもあるだろうし、つまり前作のような極限での経験によるものだろうと思う。
シリーズを通しての成長、彼女だけでなく登場人物の1つの現場(1つの作品)を通じての成長。そういう成長物語でもあるのかな。

諦めたくなるような状況で、それでも「必ず助ける」という意志。そういう生への執着のようなもの(たとえば「上に逃げるために一度下へ降りる」なんて判断もそうだよね)がことさらに強調されるがゆえに、逆にたった1行(=ほんの一瞬)で消える生もあって、そのはかなさとのコントラストが際立つように感じられた。「えぇっ?!」って感じよ。

そんな感じでめちゃくちゃ感情が波に揺さぶられ続けながら、息つく暇さえなくラストまで堪能しました!!

*  *  *

あまりページを割いて描かれることはなかったけど、海保もめっちゃ活躍したんだろうなと。夜明けの事故現場に向かう海保の物語をぜひスピンオフで(笑)。


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