2020年8月7日金曜日

盤上に立つ孤高の狼。

塩田武士「盤上のアルファ」を読了。「罪の声」がおもしろかったので、塩田作品をもう1冊いってみました。以前から気になってた1冊でもあります。

将棋の世界が舞台ですが、くしくも読み始めた日に藤井七段が棋聖タイトルをゲット。運命感じちゃうなぁ(違)。

――アルファとは、群れの中で最高位に位置する孤高の狼のこと。

第1章、新聞記者・秋葉の章。
異動した彼が初めて目の当たりにするタイトル戦――これは門外漢である読者への説明という意味合いもあるだろう。場の雰囲気を感じるには十二分なイントロダクションだと思う。
破れた挑戦者との最後のシーンはものすごく気持ちよくて心地よくて、3回も読んじゃった(^^;

ちなみに僕自身、駒を動かすことはできるけれど、決して上手でもなければ詳しくもないわけで、この章はありがたかったかも。
昨今の巣ごもり生活の中で、久しぶりにやってみて、坊主2号に初めて平手で負けた。衝撃的に悔しかった。

第2章、アマチュア王者・真田の章。
いかにもドラマチックな生き様の男が登場する。無頼、とでも言うのか。
もう若くない年齢、しかし持っているものはただひとつ、「将棋」のみ。

第3章、同い年の2人は出会う。なぜか美人女将の小料理屋で(^^;

ここからがある意味本題。第4章・5章とタイトロープのような細く厳しい道筋で、改めてプロを目指す真田。それを見届ようとする秋葉。
“ら”の「崖っぷち」の戦いが始まっていく。


僕には盤上で動いている駒の姿まではイメージできない。もちろんイメージできたところで状況は理解できないだろうが。
それでも、対局のヒリヒリするような空気は感じられる。まるで小説の中の音楽が聴こえてくるような気がするとの同じように。

いやー、緊張するぅ!

このタイトロープを渡り切れるのかどうか、それは棋士にとっては生死そのものなのかもしれない。

真田は孤高の狼の姿を思い出す。『アルファの目が物語るのは、動物が持つ「生」への執着』だと気づく。そして盤上のアルファは思うのだ。『敗北を考えることに何の意味があるのか』と。

いやー、緊張するぅ!(再)

『真田の顔は紅潮し、強い視線が秋葉を射抜いた。秋葉も今度は目を逸らすことなく、彼の全身からあふれる気合を受け止めた』

そんな緊張の中で、急にほんわかな(?)シーンがあったりして、そのギャップに感情の上下動がタイヘン(^^;
いい意味で揺さぶられましたっ!!

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余談。第1章ではとある関西地方の強烈な人物像が描かれている。濃厚すぎるのは一般論なのか、あるいは何か恨みでもあるのか(笑)。

余談2。テレビの中の将棋を見てていちばん思うのは、あの「負けました」の瞬間のこと。
凛として美しい敗者の姿。かたや強く感情を表に出さず、感想戦という形で手の内・思考回路を示す勝者。なんだろうあれは。

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