2019年5月15日水曜日

この探偵は事件を奇蹟だと示す。

高校生ビブリオバトルでのオススメ第二弾「探偵が早すぎる」からさらに読み進めようということで、井上真偽「その可能性はすでに考えた」を買ってみた。

“事件を起こさない早すぎる探偵”に続き、本作での探偵は、事件のトリックのあらゆる可能性を否定し、「これは奇蹟だ」と主張する。問題の解決にはちっともなってない気がするが(苦笑)、『依頼人が納得する答えが出せれれば』解決、というのは確かにそうかもね。

探偵は『どんな可能性も否定できる』と言う。これは「ないことを証明する」といういわゆる“悪魔の証明”にほかならない。

案外ハードルは高いよ、この設定は。
偶然にしてはできすぎ、と思うようなことも、可能性さえあればそういう反論ができないということだ。

山間の密室のような村で暮らしていた宗教団体のメンバーが全員死亡する中、唯一生き残った少女が成人し、「私は当時の記憶がないのだが、私が犯人ではないのか。調べてほしい」という依頼から始まる。
これに対して探偵は、すべてのトリックの可能性を消し、少女は犯人ではなかったと示し、事件は奇蹟だったと結論づけるのだが、そこに立ちはだかる「論客」。
その相手との推理バトルこそがこの物語の本筋になる。

「こういう可能性があるだろう」
「いや、それはこういうことで」
「それは論理的に」
「可能性があればそれで十分、否定するのは探偵の役目だ」

そういうディベートの繰り返し。
登場人物のほぼ全員が高速回転で頭を回し、論じ、否定され、反論し。忙しいったらありゃしない(^^;
正直、読者であるワタクシ、ちょいと置いてきぼりくらった感。こちらの回転が間に合いません(笑)。

おまけに登場人物のキャラ立ちが強烈。現実感がないというか、キラキラした舞台のようというか映画的というか。
メイクも衣装も小道具もなんもかんも。

最後の場面は港の見える丘公園、青髪の探偵が瀕死の重傷を負いながらも、すべての登場人物に語る、その緊迫感!!みたいな感じですからねぇ。

物語を追うだけで忙しい頭の中が(何しろ事件の背景すら頭に入りきらなかったもんでね)、大渋滞しちゃった感じですよ。

好みはあるとは思うんですが、僕にとっては少々“読みにくかった”かな。
続編もあるんだけど、どうすべ。

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