2016年8月24日水曜日

伴奏なくても歌えるさ。

キョンキョンのおすすめ第10弾、山本文緒「アカペラ」を読了。

収録されているのは3編の物語。

表題作でもある「アカペラ」。主人公は中学3年生女子。ダメな母とボケかけた祖父と、たくましくしたたかに生きている。

2編目は「ソリチュード」。地元に帰ったダメ男が、元カノとその娘との関わりの中で自分自身を見つめていく。

「ネロリ」なんかアロマの香りの名称らしい。まったく縁がないのでよくわからんのだが。中年女性と病弱な弟。この2人きりの家族の絆が、家に出入りする若い女性の目線で描かれる。

で、あのですね、女子中学生とかいう得体の知れないものに思い入れを持つとか、僕は自分が信じられん(笑)・・・ということは置いておきつつも、登場人物がみな切なくも愛おしく、正直でなんとも魅力的。相当なサプライズもありつつ、総じてやさしい物語だ。

ところが、それぞれの話には何の関連性もない。なぜ1冊にまとまってるんだろう。ふと思い、改めてキョンキョンの書評を読み直して得心した。

登場する中年がことごとく「ダメ」なんだ。そのダメさを本人も自覚してたりするし、それを若い連中にに痛いほどに指摘されてるということ。

それでも生きている“ナイスじゃない”ミドルたち。若者に突き上げられても、ダメなままもがいてる。それでも生きている。鼻歌を歌いながら。
作者に「それでかまわないよ」と言われているようで。

『確かに感情をうまく言葉にできない。そして今気がついた。言葉にできない以前に、頭の中で、あるいは胸のうちで、己の感情がどういうものなのかうまくつかめないのだ。』――「ソリチュード」より

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