2024年9月21日土曜日

翳りゆくひと。[057]


[057]

約束の時刻になってイワキさんからわたしのスマホに電話が入った。

『マンションの下まで参りました』

やっぱりあっちゃんの準備がまだできてない。

「すいません、5分ほどお待ちいただけますか。すぐに下りますので」

急かすようにあっちゃんとともに出発する。マンションの下でイワキさんがあっちゃんに声をかける。

「先日はありがとうございました」
「ん、あ、はい」

やっぱり覚えてなかったか。それでもあっちゃんは何かを拒絶するようなこともなく、車に乗り込んだ。
急に「行きたくない」とか言われたらどうしようかと思ってたのだが、これもあっちゃんの外面の良さ、みたいなことなのかもしれない。

昔話を含めた雑談をしながら車に乗ることおよそ30分弱。最初の目的地である介護付き老人ホームに到着した。
思っていたよりも街中にあるんだな。外観は普通のマンションと変わらない。

応接室のようなところでまずマサさんとあっちゃんの現状確認を。大枠ではイワキさんから伝わってるはずだが、再確認ということだ。

「ご主人の麻痺は左右どちらでしょうか」

わたしが思い出そうとしていると、横からイワキさんがすかさず、

「左です」

と回答してくれた。

あっちゃんには直接、持病とか最近の様子とかが質問された。やたらにハキハキと回答してるが、それは昔の話でしょと思うことも多々。あとで訂正しとかないと。

それからは相談員の方から施設の説明を。特に医療関係の充実度を丁寧に説明してもらった。この医療体制は好印象。十分に信頼に足る内容だと思った。
家族としては一番のキーポイントだし。

その後は実際の居住スペースを見学させてもらった。
施設そのものは大きいものの、全体に落ち着いている印象だ。

帰り際、相談員の方に耳打ちをした。

「先ほど、母は自身の生活が完全に自立しているように言っていましたが、実際にはかなり厳しいです。話半分でご理解いただければ」

ふたつめの施設は、ひとつめの施設から車で5分ほどのところにある、住宅型老人ホーム。

「こちらは食堂のスペースで、一流ホテルのシェフの監修でお料理を提供しています」
「月に一度、世界のお料理を」
「ご希望があればバスで遠足のような形でおでかけも」

なんだろう。説明の担当の方がグイグイとアピールしてくる感じだ。
そのときに気がついた。ひとつめの施設では担当の相談員の方は、ロンTの上にポロシャツ姿で、いかにも「現場のスタッフのひとり」という感じだったのが、この施設の場合、白のブラウスに黒のスーツ。つまり「営業マン」然としているということに。

確かにさまざまなサービスは充実しているように思える。でもそれは、ひとつひとつ料金が発生して初めて成り立つことであって、となるとマサさんの介護も「金で頼む」ということのひとつでしかない、ということだ。
余裕があればそういう選択肢もあるのだろうが。

そしてもちろん、ベースの費用もずいぶんと高額になる。

帰りの車の中でわたしはイワキさんに、「住宅型はコスト含めて難しいと思います」と伝えた。イワキさんもまた「そう思います」と。

この日はあっちゃんのコンディションも考慮して2つの施設で見学を終えた。明日もう1つ見学して、そして結論を出そうとわたしは決めていた。

マンションに戻ったあっちゃんだが、やはり疲れたのか、ソファに寝そべってしまった。

「疲れちゃった」
「立ってるとクラクラしちゃう」

そういう姿を見ていても、やはり「介護型」以外の選択肢はないのだろうと思う。

「明日もうひとつ見に行くからね、早く寝てゆっくり休んで」

あっちゃんのための晩御飯をコンビニで調達しておいたのだが、電子レンジがゴミの中に埋もれていて使えないということを忘れていた。ごめん。

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2024年9月20日金曜日

太陽の塔。

太陽の塔って言わずと知れたEXPO70のシンボルで、現在も万博公園すなわち大阪に聳え立ってる。
でもこの話は京都に住まう学生の話だ。そんなに遠くはないけどな。
不思議と言うか疑問と言うか。だけど読み進めていけば、その理由がわかる。いや、わかってないかもしれないけど。知らんけど。


ほむほむのおすすめ第1弾(実際にはおすすめされてないのかもだけど、「穂村弘の読書日記」に登場する一冊です)森見登美彦「太陽の塔」を読了。

冒頭から主人公のストーカー体質が正直気持ち悪くて、まさかこれは小説ではなくてエッセイだったりしないよなと恐怖感を感じてたんだけど(笑)、「ああ、これは紛れもなくファンタジーだ」と。

だから、太陽の塔なんだよね。

恐ろしいほどでかくて、何を見てるかわかんない形相で、吸い込まれそうで踏みつぶされそうで、でも圧倒的にカッコよくて。爆発で。そして「宇宙遺産」。
あれこそが若者が妄想する世界――ファンタジーの世界のものなのだと。
詳しくは読んでくれ(投げやり)。

僕だけだったのかもしれないけど、たぶん大学生ってふわふわした5センチぐらい宙に浮いた生活と何の役にも立たないどころか浪費する時間の中の生きてるはずで、ただただそのことを書いた小説だった。ま、要するにだ、びっくりするほど内容はないよう、なの。

でもそれが案外、いや、とっても心地よかったりするわけだ。ノスタルジーだけどな。

『ちょっと寂しいときにだけ、かまってくれれば十分だ』
『我々の日常の大半は、妄想によって成り立っていた』


2024年9月19日木曜日

大きくなってもやってることは同じ。

『あれはクラウン!あっちはブルーバード。あ、コロナ!』

そう叫んでたのはまだ小学校に上がる前の私です。
走ってくるクルマの名前を次から次へと言い当ててた、らしいです。
あまり細かく車種を並べ立てると歳がバレますね(笑)。

その様子に、末は博士か大臣か、なんて言われたものです。たぶん。

そんな元神童くん、実は最近も頭の中で車種を言うのがちょっとしたブームになってるんです。自分の中だけね。


特にトヨタのミニバン/ワンボックス、アルファードとかヴェルファイアとかノアとかボクシーとかハイエースとかを見分けるのが楽しい(謎)。新型と旧型も混じってる上に、ときどきエスクァイアとかエスティマとか出てくるし。そもそもトヨタのミニバンは走ってる台数が多いのでね。

自分でもなんでそんなことになってんだかよくわかってないんですけどね、もしかしたらアレかなと思うことはあります。

新型のプリウスとかクラウン、それからノート/オーラあたりの、工業デザインとしてお気に入りのクルマがいろいろ登場してきた――変に主張するパーツとかがなくて、全体がひとつのパッケージとしてまとまってる、そんなデザインが好きです――のがきっかけかもしれません。見かけるたびに「ああいいな」と思うところから、だんだんほかのクルマにも目が行くようになったのかなと思います。
新型プリウスなんて、一歩進んで「何色が一番デザイン的にかっこいいか」を考える日々。

だからなんだって話じゃないですが、そんな毎日です。

あと言っておきたいのは、残念ながら、博士にも、もちろん大臣にもなってない、ってことですかね。誰もそんなこと聞いてないですね(^^;


2024年9月18日水曜日

翳りゆくひと。[056]


[056]

前回かなり片付けたリビングテーブルの上に置いた「新しく届いた郵便物はここに」と書いた書類トレイからは、通販で買ったコーヒーの請求書と、そして前回も支払った野菜ジュースの請求書が見つかった。
ただこの野菜ジュースの請求書には「クレジットカード払い」「定期購入」の文字がある。前回はそんな記載はなかった。
リビングを見渡してみると、未開封の野菜ジュースのダンボールが数箱、積み重ねられている。

「これ、野菜ジュースの請求書あったけど」
「あら、払ってない?」
「いや、クレジットカード払いって書いてあるけど」
「そんなことないと思うけど」
「それに定期購入になってるよ」

だめだ。今のあっちゃんに通販は無理だ。わたしはコールセンターに電話をした。

「すいません、現在の契約状況が知りたいのですが」
『定期購入のコースに入っていただいています』
「では、解約をお願いします」
『差し支えなければ理由をお聞かせいだきたいのですが』
「消費がまったく追いついていませんので」
『承知いたしました』
「ところで、念のためですが、すべての代金はお支払いさせていただいていますか?」
『はい、未収のものはありません』

積み上げられたダンボールに目もくれず、そろそろ野菜ジュースを買わなければと電話すると、いつも購入いただいているので定期コースはいかがですかとお誘いを受け、簡単に承諾し、さらにお支払いはクレジットカードが便利ですよと言われ、カード番号を伝える、そんな流れだったんじゃないかと想像する。
そしてその一連の流れをひとつも覚えていないのだ。解約できてよかった。

そんなあっちゃんにどうしても思い出してほしいことがある。

「マサさんのマイナンバーカードの暗証番号ってわかる?」
「暗証番号?」
「マイナンバーカードを発行するときに役所とかで自分で設定してるはずなんだけど」

ゴルフ会員権の売却の話をしている際に、ゴルフクラブの方から会員権のほかに印鑑証明が必要だと言われていた。マサさんのマイナンバーカードはわたしの手元にあるから、暗証番号さえわかればコンビニで発行が可能だ。

「えーっと、△△△△かしら。私のは▽▽▽▽で」

その数字には十分に妥当性がある。可能性あるな。

「少し片づけしたいから、コンビニでゴミ袋買ってくるよ」

そう言い残してわたしはコンビニに向かった。レジで支払い期限を過ぎていた通販のコーヒーの代金を払い、そして端末を操作してマイナンバーカードでの印鑑証明の発行にトライした。

あっちゃん、暗証番号、合ってたよ。これはうれしい。
これで住民票の発行やら、いろいろなことに活用できる。

マンションに戻り、散らかってるゴミをゴミ袋に放り込みながら、声をかけた。

「もうすぐイワキさんが迎えにきてくれるから、そろそろ準備してね」

あっちゃんの準備が遅いのは織り込み済み。早めに早めに。

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2024年9月16日月曜日

下地と積み重ねと意志。

マチェイさん、おかえり。

チームに合流して1週間。おなじみの「堅い」ディフェンスがそこにはあった。
メンバーを代えるわけでもなく、この形を短期間に整備できるのだから、そこはさすが。
チームの中にも下地として根付いていたんだろうと思う。

試合時間の経過とともに守備だけでなく攻撃面でもスムーズさが増してきたような感じで、シュートや決定機こそ多くはなかったものの、今後にも十分期待できる内容だった。

守備重視に見えるサッカーが好きか嫌いかというのはあると思う。でも共通してるのは「負けたらつまらん」ということ。その意味では満点リスタートだった。

それにしても守備がここまで短期に整備できたのだから、いよいよ攻撃面での積み上げ、期待しちゃいますね。勝ち点も積み上げながら。
監督交代のタイミング考えても「公式戦による2025シーズンのトレーニング」の一面もあるだろうし。

G大阪 0-1 浦和○

おかえり、元気。

前節のことがあるから、1点リードの終盤に緊張感が走るのは当然のこと。
そのタイミングでセントラルMFに投入されたのが背番号78、原口元気。

画面を通して伝わってくる闘争心。緊張の場面で落ち着きをもたらすのではなく、「絶対に負けない」という強い意志を伝播させるプレーだったと思う。その意志こそ、原口元気そのものだった。
最後尾から最前線へのスプリントも圧巻だった。得点への欲求の発露。

元気がそこにいるなら、もうバカバカしい負け方はしない。


翌日のWEリーグ開幕でも、ベレーザに何もさせずに快勝。いい週末です。


2024年9月14日土曜日

翳りゆくひと。[055]


[055]

4月24日、イワキさんに調整してもらった施設の見学スケジュールに合わせ、わたしはあっちゃんちに向かう機内にいた。
地上がまるで見えない雲海と、そして広がる青空を見ながら、『急がれたほうが良いと思います』というセイコさんの言葉が、繰り返し頭の中に浮かんでは消えている。
なんとかこの2日間で「決着」にまで到達したい。そこまでたどり着いてようやく「晴れ間が見える」はずだと信じて。

マンションに着くとあっちゃんは「今起きたのよ」とまだ朝食中だ。
時計はすでに10時を大きく回っている。生活のリズムがさらに乱れていることが想像できる。

そもそもわたしが来たこと自体にほんの少し驚いているようにも見える。

「今日、何日だったかしら」
「24日だよ」

電話台の上のカレンダーを見上げて「24日の10時ってカレンダーに書いてあるわ。起きたとき見なかったのかしら」と。
日付がわかってないんだから、仮に見てたとしても、気づいてなかったかもな。

「今日は施設の見学だから、とにかく朝ごはん食べちゃって」

チラリとキッチンを覗いてみると、まさに「惨状」。2月のときも片付いていないとは思ったけれど、ここまでではなかった。シンクは洗い物で埋め尽くされ、コンロの上もいつ使ったのかもわからないような鍋が並ぶ。電子レンジの扉はゴミ置き場と化し、ゴミ袋にも入れられない空き缶やペットボトルが床に転がっている――。

セイコさんからの『家の中は散らかっていましたし、果物なども腐らせているようでした』というメールの文面から想像していた、数倍のレベルの散らかりようだ。コバエが数匹飛んでるのも見える。
ここだけ見れば十分ゴミ屋敷だ。

「ねえ、キッチンすごく洗い物とか溜まってるけど、料理ちゃんとできてる?」
「ちゃんとやってるわよ」
「これでできるとは思えないんだけど」
「そんなことないわよ」

この会話の中で、わたしには何か触れてはいけないものに触れてしまったような感覚があった。あっちゃんにとって台所は「聖域」なのかもしれない。変に怒らせてしまっては元も子もない。
わたしは話題を変えた。

「施設の見学、今日の12時半にイワキさんが迎えに来てくれるから」
「イワキさん?」
「この間セイコさんと一緒に面談に来てくれた男の人だよ」
「セイコさんと?そう」

残念ながら予想どおりの反応だった。

それはさておき、今日は時間がない。マサさんの部屋に入って懸案になってたゴルフ会員権の捜索だ。アタリを付けていた場所を中心に探すもののやはり発見には至らない。これについてはいったん「紛失」ということで処理を進めてもらおう。

この捜索の途中で、マサさんの部屋のライティングデスクの引き出しに銀行印を見つけたので、それは確保し、わたしのバッグの中にしまっておくことにした。

近い将来、銀行での諸々の手続きが必要になるはずだから。

が、そういえばとリビングテーブルの上の文箱に入っていたはずのマサさんの実印が、文箱ごとどこかにいってしまっている。
マサさんだけじゃなくて、あっちゃんも片付けているつもりでモノをどこかに移動させてるんだろうな。

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2024年9月13日金曜日

萎んだ男の話。

『ジジィは膨らむタイプか萎むタイプかの二択』

旧くからの友人のセリフである。
確かに諸先輩方々のお姿を思うに、歳取る=太るではないなぁと思う。

で、老いつつある私めでございますが、どっちかっていうと「萎む側」みたいで、冒頭のセリフは「最近ちょっと痩せた?」に続いて出てきたものだったりする。
一般論としておっさんに「痩せた?」って聞くのは病気の場合があるからな、要注意よ。

実際に体重は少しばかり落ちたけど、普段それをあまり意識することはなかった。
だけどこないだ急に実感することになって。

それが腕時計のバンド。

体重減とともに腕が細くなった結果、バンドがすごく緩くなってて、腕を上げれば肘のほうにずるずると落ちていってしまうし、逆に腕を下に向けると小指側の出っ張り――足首で言うところの「くるぶし」。あれ手首のほうだと何ていうの?――を越えて、手の甲に時計してんの?みたいな状態に。

なんだか困ったなぁと金属バンドをよくよく見てみると、コマを外すまでもなく、少しだけサイズを縮められる「穴」が開いてた。よし、自分でやってみようっと。

・・
・・・(あっ!)

いきなりピン(バネ棒)が折れましてね(涙)。道具もなしにシロートが手を出していいもんじゃありませんな。

ご近所のお店に持って行って「あの・・・ピンが・・・」と新しいものを付けてもらいました。「あ、穴が3つあるんですけど、一番奥で」と言い添えるのは忘れずに。
およそ10分、550円+消費税。ありがとうプロフェッショナルの仕事。ピンのサイズがいろいろあるそうですが、そこはメイドインジャパンの時計なので問題なし。

6ミリぐらい縮まったのかな、おかげさまで希望どおりのバンドのサイズ。

が、ジャストフィットになったおかげで金属バンドの下に大量に汗をかくかく。気持ち悪いほどに(涙)。というオチ。


何が言いたいかっていうと、この先は肥えるでも萎むでもなく、なんとか「中肉中背」でいたいな、と。
そんなことを思う夏の終わり。


2024年9月12日木曜日

探しに行こうぜ、カーブの向こうへ。

発売日よりも前に予約してフラゲしました。今どき物理的にCDを。
それほどに楽しみにしてました。米津玄師「LOST CORNER」です。


届いてからずーっと聴きまくっているわけですが、なんだろうね。かっこいいわ(雑)。
もうそれ以外ないのよ。

それでもあえて何か書くとするなら、すごく文学的ってことかな。
「詩」のようなものはもちろんのこと、エンタメ小説的だったり私小説的だったり。
とにかくいろんな世界をこちらに想像させてくれる。その部分に特に凄味を感じたのです。

というか、やっぱり「かっこいい」だな。うん。

耳なじみがあるせいかもしれないけど、この曲は強く印象に残りました。
それではお聴きください。「さよーならまたいつか!」。



2024年9月10日火曜日

年齢なんてただの数字。

本日、弊ブログの筆者は誕生日であります。
お祝いの言葉を届けてくださったすべての皆さんに御礼申し上げます。まだの方はお早めに(笑)。なお、プレゼントは年中無休にて受け付けております。

当然のことながら年齢が「プラス1」になりましたが、例年にも増してそのことに何の感慨も抱いてないなというのが正直なところです。

「年齢なんてただの数字」「ただの記号」なんて言いますが、本当にそんな感じです。特にポジティブな意味は含んではいなくて、単純に「何も思ってない」だけなんですけど。

なので引き続き「今を生きる」だけです。今日もそう思っていますし、これからもそう思っていきたいです。



2024年9月9日月曜日

【Paris2024】ロスなのでロスを待つ。

パリパラリンピックが閉幕。

毎度のことながら、「そうか終わっちゃったか」という“ロス”の思いと、「規則正しい生活で睡眠不足を取り戻そう」という気持ちが両方あったりする。

すごく充実した12日間だった。

完璧だったとは言わないけれど、多くの競技の配信をストレスなく見ることができたことは大きかった。
必ずしも日本語実況が付いているほうがいい、みたいなことでもなかったしね。でも「愛ある解説者」の解説はもっと聞きたかった気もするけども(^^;

TOKYO2020のときにも書いたかもしれないけど、障がい者スポーツだってことを忘れちゃうんだよね。ただひたすらに、スーパーなアスリートたちの競技を堪能させてもらった。
感謝という言葉はちょっと違うかもしれないけれど、本当に楽しませてもらったことをうれしく思っている。

“ロス”まで4年。

選手個々の競技力はまた途方もなく進歩していくんだろう。
そしてそれを下支えするであろう、多様性と公平性を両立させる競技ルールもまたブラッシュアップされていくに違いない。
ルールとはかくも厳格なものであると痛感したのが女子マラソンT12の3着の選手のゴール前での失格処分。しっかりとした競技運営の対応だった。道下さん銅メダルおめでとう。

いちスポーツファンとして、その時を楽しみに待つことにしよう。


今回のパリパラで「やべぇ」と思ったのは観客。
どの競技でも、たとえフランスが出場していなくても、会場はいつも満席だった。

ブラインドサッカーとかゴールボールとか視覚障がいの競技は大丈夫なのかと心配するほどの盛り上がりだった。
オリンピックのときには「官製応援団」みたいな話もあったけれど、それでもいないよりはいるほうがいい。空席が目立つよりは満席がいい。

選手がインタビューで口々に「声援が」「今回は有観客で」と話していたのは、アスリートとしての本音だったと思う。

仮にTOKYO2020が有観客で実施できていたとして、あそこまでフルハウスになっただろうか。あそこまで盛り上がれただろうか。他国の選手が「応援に感謝」と言ってくれるような“応援の濃度”は示せただろうか。

パリの観客の濃密さが、パラリンピックの基準になるといいな。
それがレガシーとしてロスにもつながっていきますように。


2024年9月8日日曜日

翳りゆくひと。[054]


[054]

あっちゃんマサさんとSS社との面談の内容は、すぐにイワキさんからメールが来た。

『お母様、老人ホームへの住み替えに理解をいただきました。外出ができるようなところがいいとの希望もいただいています』

この感じ、あっちゃんの「ものわかりの良さを演じる外面の良さ」ではないだろうか。わたしにはそれが逆に心配ではあったが、これもまた半歩前進と思うことにしよう。

『お父様とも、弊社社長同行にてお話しさせていただきました。判断能力については問題ないと存じます』

そうなの?とは思うものの、不動産売却という問題があるので、ここはうまく進んでいるという理解をしておこう。
そういえば証券口座の現金化のときにも同じようなことがあった。何事も足を運んでもらって対面で確認してもらった、おそらくその事実が重要なのだ。

この面談を経て、施設の絞り込みが進むことになる。ただしふたりの「介護度」に差があるので、そこをどう考えるか、ということがひとつの課題になりそうだった。
その点も踏まえ、わたしはイワキさんとの電話ミーティングを行った。もちろん費用面も含めた話である。

『部屋の空き状況なども考えて、おおよそ3つの施設にまで絞り込みました』
「助かります」
『ひとつめがパンフレットをお送りしている介護付き老人ホームです。終身の契約と3ヶ月毎の契約が選べて、当然終身契約のほうがイニシャルコストはかかりますが、たとえば病院に入院している間に解約になってしまうなどというリスクがありません』

電話越しに伝えてもらった費用をそれぞれメモしていく。

『ただ介護付きの施設は自由度が下がるので、お母様のご希望の外出といったことは難しくなります』

たしかに希望は希望なのだろうけど、今のあっちゃんの状態を考えると、むしろ外出できないほうがいいのではないか、わたしはそんなことも思っていた。回復するようなことがあれば別だが。

『ふたつめは住宅型の老人ホームです。こちらもパンフレットをお送りしているところです。住宅型なので外出などもかなり自由ですが、介護のほうは追加サービスとして提供されるのでコスト面は状態によって増えていくこともあります。そもそものイニシャルコストも高いので、お父様の状態を考えると、費用面で難しいもしれません』

こちらの懐具合をしっかりと理解していただいているが故のサジェストだ。

『みっつめは介護付き老人ホームです。こちらは資料をお送りしていない施設なのですが、まずイニシャルコストがありません。そのぶん月々の費用が少し高くなるという感じです』

イニシャルで払うほうがいいのか、ランニングで払うほうがいいのか、それはつまり、言葉は悪いが「あと何年、生き続けるか」の話とイコールであって、答えなんてない。
いずれにしても提案いただいた施設を見学する方向で調整をしてもらい、その上で結論を出しましょうということになった。

電話を切り、わたしは表計算ソフトを立ち上げてそれぞれの費用を入力していった。

残念ながら手持ちの「資産」だけでは短期間しか施設の費用は賄えない。
もちろん年金だけではふたり分の費用は払えない。
両方を合算し、たとえばマサさんが100歳になる10年後、その時点までに必要な総額は。

数字上はなんとかなりそうな気もするが、年金全額を施設に入れられるわけじゃないからな、そのグレー部分はどう考えるのか――しばらく数字をいじったりしながらシミュレーションしてみたが、何か答えが見つかるわけではない。どうにかなるだろ、そう割り切ってわたしはファイルを閉じた。

そしてその「どうにかなる」ための連絡もイワキさんから入っていた。

『マンションの暫定的な査定価格が出ました。もちろん内見次第で金額の前後があるようですが、△万円~△万円程度とのことです』

相場がわからないので金額の多少はわたしには判断ができない。ただその額そのものは大変ありがたい数字であることは間違いない。

しかし、それすらも「限りあるもの」。

長生きすればするほど必要なカネは増えていく。家族としては複雑極まりない。

053<[翳りゆくひと]>055


2024年9月7日土曜日

【Paris2024】挑め、自分史上最高。

パリパラリンピック10日目。

確かに「金メダルを取ってほしい」とは願ってたけど、オランダ、特にデフロート選手の壁は高すぎるぐらい高くて、正直なところ信じきれるところまではいってなかった気がする。


でも、やってくれた。ダブルスだけでなくシングルスまで。
信じ切れてなくて本当にごめんなさい。そしておめでとう、上地さん!
(※一昨日の投稿で「生涯グランドスラム」って書きましたけど、細かくはダブルスが「グランドスラム達成済」で、シングルスはウィンブルドン勝ってないです。念のため)

「推し」が目標に届くのってこんなにうれしいんだね。

Wheelchair Tennis Women's Singles Gold Medal Match
NED DE GROOT D 1(6-4,3-6,4-6)2 JPN KAMIJI Y


「挑め、自分史上最強。」

今大会の日本代表のスローガンである。上地選手はもちろんのこと、柔道や競泳、そのほか多くの競技で自分を超えていくシーンを見ることができた。

日々自分の維持で精一杯な僕から見れば、その姿はまぶしくてしかたがない。
そもそも「挑む」ことがないもんな・・(悲)。


2024年9月6日金曜日

カキフライがなくてもだいじょぶ。

僕はもともとカキフライあんま食べないんで、ミックスフライとかとんかつとかのレギュラーメニューがあれば特に問題ないっす。ってどうでもいい話だね。

というわけで、自由律俳句の句集と言っていいのか、せきしろ×又吉直樹「カキフライが無いなら来なかった」を読んだ。
どこかでオススメされたように記憶してるんだけどどこだったっけな。

そもそも僕にとっては「自由律俳句とは何ぞや」という大問題(笑)。
なんでも季語もないし五七五への縛りもないと。そんなん俳句なん?という気もしないでもないんだけど、まあ「猛烈に短い詩なんだろうな」ぐらいの緩い気持ちで読んだ。


そういえば俳句とは情景を詠むもの、とテレビで夏井センセが言ってた。
その上で読み手が想像するのだと。

じゃ、自由律俳句はどうか。とにかく自由すぎてな(笑)。
もちろん情景は見える。何気ない日常の風景だが、作者の気持ちが動いたその情景が。その意味では間違いなく「俳句」なんだと思ったりもする。
でも自由だからな、情景だけでなくて感覚まで伝わってくるものもあったりでなんだか不思議な心持ちにもなる。懐かしいとかくすぐったいとか。
良い悪いではなくて、この世界は嫌いじゃないな。

行ったけど閉まってたと嘘

さて、そんな読み手の私であるが、人として多少ひねくれてる自覚はあるものの、又吉先生ほど捻じれまくってはいないな、などと思ったりもして(失礼)。
句集を読んでるとは思えないほど、楽しく楽しく読み進められた。

ところどころに散文が挟まる。
情景から想像した作者の感情がまるで違うもので驚くやら笑うやら。

ところどころ写真が挟まる。
これも何気ない、市井の何もない日常の風景だが、この味わい深さはいったい何だ。実にいい。
思わずカメラが欲しくなったが、この味わいの写真を撮影できる自信はない。

写真と同様、それこそこの短い言葉の連なりを「書いてみたい」けれど「きっと書けない」とも思うの。だって僕の文は長い。
そして何より、僕はカキフライは頼まない派だもん。

やや欠けた月も満月として詩


2024年9月5日木曜日

【Paris2024】匠の技を味わう。

パリパラリンピック8日目。

この大会ですごく応援している選手がいる。それは車いすテニスの上地結衣選手。

すでに生涯グランドスラムを達成している車いすテニス界のトップオブトップの選手ではあるんだけど、London2012から出場しているパラリンピックでは金メダルがない。

彼女の長いキャリアの間に車いすテニス全体のレベルは上がったと思う。特にパワー面。
逆に上地選手はサイズもないし、パワーだってない。サービスゲームをキープするのにも苦労するようになっている。
車いすの構造上、もともとサービスブレイクが多い種目ではあるのだけれど。

それでも、仮に失うポイントが多くなったにしても、常にていねいにていねいにボールをつなぎ、配球し、そして1点ずつポイントを積み重ねる――。そういうプレースタイルだ。「匠の技」と呼んでもいい。
だもんで見てると結構しんどい(笑)。

この日の女子シングルス準決勝もまさにそういう展開になった。


粘った。粘り切った。すばらしい勝利だった。
決勝も期待したい。応援したい。そして生涯ゴールデンスラムを、と祈る。
女子シングルス決勝は6日22時ぐらいかしら。

Wheelchair Tennis Women's Singles Semifinal
NED VAN KOOT A 1(0-6,6-4,4-6)2 JPN KAMIJI Y


残念ながら準決勝で敗れてしまったんだけど、ボッチャ混合チームBC1/BC2の準々決勝はヤバかった。
3点ビハインドで迎えた最終6エンド、少なくとも僕の目には「壁ができててコースがなくて、ほぼギブアップ状態」に見えてた。

が。エース杉村の投じたボールは、宙を舞い、相手の壁を越え、見事に直接ジャックボールにコンタクトし、そのまま味方の待つ後方スペースへと押し出していった。

形勢を一気にひっくり返し、3得点。

これぞ杉村!!どうだ見たか!!僕が言うセリフじゃないけど(^^;

この「匠の技」たる一投が見られただけで、もう僕は十分(涙)。
タイブレークも相手のミスを誘うそれはそれは見事なプレー。

Boccia MixedTeam-BC1/BC2 Quarterfinal
JPN 4*-4 BRA


2024年9月4日水曜日

この調子で。

生活習慣な通院の21回目。前回の話は→コチラ

検査結果は0.1ポイント悪い方向に振れましたけど、夏場の運動不足の自覚もあるので「まあまあかな」と思いました。

ドクターも「うん、この調子で」とおっしゃってましたので、今の生活よりもだらけないように暮らしていくだけですね。


次回は7週間後です。


2024年9月3日火曜日

【Paris2024】寝てる場合じゃない。

パリパラリンピック6日目。

里見さんの連覇も、車椅子ラグビーの悲願の金メダルも、梶原君の圧勝も。

もちろん目標に届かなかった選手たちの奮闘も。

この目で見られて幸せです。スポーツファンで良かった。


だがしかし。眠い。

Para Badminton Women's Singles WH1 Gold Medal Match
JPN SATOMI S 2-1 THA POOKKHAM S

Wheelchair Rugby Gold Medal Match
JPN 48-41 USA

Para Badminton Men's Singles WH2 Gold Medal Match
JPN KAJIWARA D 2-0 HKG CHAN HY


2024年9月2日月曜日

【Paris2024】勝負の際。

第4ピリオド残り43秒、47-47同点。ボールはオーストラリア。

頭抱えた。正直に言えばもうダメだと思った。
何せこの日のオーストラリアは強かった。ハイポインターの2人を同時に抑えることは難しく、しかもここまでの31分間ほぼノーミスだったから。

一方の日本代表は1ピリのラストで取りに行ったラストトライが取れず(2ピリでも取れなかったな)、常に半歩追う展開になってしまってた。それが4ピリの最後まで響いた形だった。

が、そこからのディフェンスは強烈だった。プレーヤータイムアウトを「取らせ」た上で、残り5秒でスチール。僕は頭抱えたまま、口あんぐりだった。

そしてオーバータイムでも残り1分のところで決定的なスチールからのトライ!!絶叫「うぉぉぉぉ!!」


勝負の際の際で、2度までもノーミスのオーストラリアからボールを奪って見せた。
なんという粘り腰。なんという力。なんという勝負。

もちろんここで終わりではない。目標は「次」で勝つこと。

でも、こんなにすごいゲームを経て、その場にたどり着いた自分たちのことは十分誇ってもいい。さああと1試合!!

Wheelchair Rugby Semifinal
JPN 52-51 AUS


テレビの中とは言え、ライブで実感したゲームの凄さをどう言葉で表現しようか本当に悩んでた。パラとか障碍者とかそういう意識は見てる最中にはもうまったくなくて・・・悔しいなぁ。ちゃんと書けたらいいのにと思う。

(↑)ということで素直に論客の言葉を借りることにします(^^;


自宅トレーニング[シーズン3]#23

今年の夏は暑くって、せっかくの夏休みも冷房の効いた自宅からほとんど出なかったんですよね。結果として有酸素運動たるさんぽの量も少なかったし、とにかく全体に運動量の少ない1ヶ月だったかなと思います。月末は雨ばかりだったし。

季節が良くなったら、また動くから。動くから。動くから。
と自分に言い聞かせて。


【2024年8月度】
加圧トレーニング:3回[自宅トレ通算240回]
寝起き素振り:16回
月間さんぽ歩数:約30万歩

計測
前月比:   体重+0.4kg 体脂肪率+0.5pts
前年同月比: 体重+0.8kg 体脂肪率+1.1pts
2013年7月比:体重-7.6kg 体脂肪率+4.2pts

前月のトレーニング→コチラ


2024年9月1日日曜日

もうメンタルぐちゃぐちゃです。

スタイルを少しずつ変化させながら戦い方に安定したものが見られるようになってきた、と思ってたら突然の監督交代。

残り試合が少ない中で新監督が、なんとマチェイさんで。

浦和レッズを応援し続ける「しんどさ」を全力で感じながらの首位とのゲーム。

町田 2-2 浦和△

すばらしいゴールでリードしたと思ったら、安いプレーで失点して。

再びリードした中でカウンター一閃、ダメ押し!、と思ったら得点が取り消されて。

それでも逃げ切れそうだと思ったら、ATがなんだか長いし終わってくれなくて。
判定にもいらだつし、そもそも選手の集中は足りてたんかい。

しんどい。つらい。腹立つ。

でも冷静に振り返れば「よくぞ勝ち点1」レベルの内容で、ここまで積んできたもんは何だったんだい。


そんなメンタルぐちゃぐちゃの浦和サポーターに、さらに心を揺さぶるニュースが。

原口元気、復帰。

もう意味わからん(喜)。