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買ってきた袋のまま放置されてしなびてしまった野菜、賞味期限がはるか前に切れている食材、積み上げられた空き缶、倒れて転がった空のペットボトル・・・分別しながらゴミ袋にまとめていく。
自治体指定のゴミ袋が足りなくなって、コンビニまで走る。そしてまたゴミを集める。
収集日ではないので、集めたゴミはいったんベランダに出しておくことにする。が、ベランダにも古いゴミが放置されていて、ゴミ袋が劣化して破け、中身が散乱していた。それをまた新しい袋に入れ直し、改めてベランダに並べ直していく。
可燃ゴミは6袋。不燃ゴミが4袋。そしてペットボトルの入った資源ゴミは8袋。
時計を見ると2時間ほどの時間が経過してた。
「ゴミだけは少しだけだけど片付けといたから」
「悪いわね」
「ほら、キッチンも広くなったみたいでしょ。あと洗い物、こんなに溜まってるよ」
「あら。2、3日分かしら」
「いや、そんなことないよ」
「そうよ」
「まあ何日分でもいいけど、とにかく虫が湧いたりするから、自分で片付けるんだよ」
「ちゃんとやるわよ」
絶対やらないんだろうな、そんなことを思いながらもあまり無理強いはできないなとも思っていた。何より、最終的にマンションの片づけはSS社がまとめてやってくれるという安心感が今のわたしにはある。
「そろそろマサさんのところに行ってくる。今日のうちに帰らないとならないんだ」
「そうなのね。今日はありがとう」
「そうだ。これ、昨日見学に行ったところ、マサさんと一緒に暮らすことになるグッドライフのパンフレット、ここに置いとくね。来月には引っ越しになると思うから、洋服とか、大事なものとか、できればまとめといてね。また来るから」
入居の申し込みをした事実を、現実として受け止めてほしいがどうだろう。それも難しいかな。
さくら老健に到着したときにはすっかり夕刻になっていた。
夕食の時間を待つマサさんは、2月に会ったときと印象は何も変わらない。基本的には元気そうだ。もちろん会話のキャッチボールはできないけれど、これだけ元気そうなら十分だ。
あとは1ヶ月後、何事もなく老人ホームに移ってくれるか、それだけだ。
「もうすぐあっちゃんと一緒に暮らせるようになるからね。今準備進めてるから」
ちょっと頷いてくれただろうか。
復路便の搭乗案内を待つ間、今回会えなかったさくら老健のオオヌキさんに、老人ホームの申し込みをした旨をメールした。次の受け入れということもあるだろうから、情報は早いほうがいいに違いない。
もちろん、あっちゃんの心配を続けてくれているながいきセンターのセイコさんにも。一応ゴミだけはまとめたことも補足しておいた。
搭乗直前、わたしはあっちゃんに電話をかけた。
「玄関に燃えるゴミの袋があるけど、ゴミの日は明日だから、大変かもしれないけど明日がんばって捨ててね。ベランダにも2袋あるけど、玄関のは生ゴミも入ってるから必ず捨ててほしい」
「わかったわ、大丈夫よ」
「忘れちゃうといけないから、明日また電話するね」
さっきまでわたしがゴミをまとめてたことは、忘れてたかもしれないな。
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