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前回かなり片付けたリビングテーブルの上に置いた「新しく届いた郵便物はここに」と書いた書類トレイからは、通販で買ったコーヒーの請求書と、そして前回も支払った野菜ジュースの請求書が見つかった。
ただこの野菜ジュースの請求書には「クレジットカード払い」「定期購入」の文字がある。前回はそんな記載はなかった。
リビングを見渡してみると、未開封の野菜ジュースのダンボールが数箱、積み重ねられている。
「これ、野菜ジュースの請求書あったけど」
「あら、払ってない?」
「いや、クレジットカード払いって書いてあるけど」
「そんなことないと思うけど」
「それに定期購入になってるよ」
だめだ。今のあっちゃんに通販は無理だ。わたしはコールセンターに電話をした。
「すいません、現在の契約状況が知りたいのですが」
『定期購入のコースに入っていただいています』
「では、解約をお願いします」
『差し支えなければ理由をお聞かせいだきたいのですが』
「消費がまったく追いついていませんので」
『承知いたしました』
「ところで、念のためですが、すべての代金はお支払いさせていただいていますか?」
『はい、未収のものはありません』
積み上げられたダンボールに目もくれず、そろそろ野菜ジュースを買わなければと電話すると、いつも購入いただいているので定期コースはいかがですかとお誘いを受け、簡単に承諾し、さらにお支払いはクレジットカードが便利ですよと言われ、カード番号を伝える、そんな流れだったんじゃないかと想像する。
そしてその一連の流れをひとつも覚えていないのだ。解約できてよかった。
そんなあっちゃんにどうしても思い出してほしいことがある。
「マサさんのマイナンバーカードの暗証番号ってわかる?」
「暗証番号?」
「マイナンバーカードを発行するときに役所とかで自分で設定してるはずなんだけど」
ゴルフ会員権の売却の話をしている際に、ゴルフクラブの方から会員権のほかに印鑑証明が必要だと言われていた。マサさんのマイナンバーカードはわたしの手元にあるから、暗証番号さえわかればコンビニで発行が可能だ。
「えーっと、△△△△かしら。私のは▽▽▽▽で」
その数字には十分に妥当性がある。可能性あるな。
「少し片づけしたいから、コンビニでゴミ袋買ってくるよ」
そう言い残してわたしはコンビニに向かった。レジで支払い期限を過ぎていた通販のコーヒーの代金を払い、そして端末を操作してマイナンバーカードでの印鑑証明の発行にトライした。
あっちゃん、暗証番号、合ってたよ。これはうれしい。
これで住民票の発行やら、いろいろなことに活用できる。
マンションに戻り、散らかってるゴミをゴミ袋に放り込みながら、声をかけた。
「もうすぐイワキさんが迎えにきてくれるから、そろそろ準備してね」
あっちゃんの準備が遅いのは織り込み済み。早めに早めに。
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