文庫コーナーの新刊のところに並んでた、中山七里「おわかれはモーツァルト」を手に取りました。
「さよならドビュッシー」から読み進めてきたシリーズ(探偵役となるピアニストの名前から「岬洋介シリーズ」と呼ばれるそうな)です。
実はシリーズ最後に読んだ「どこかでベートーヴェン」の後、「もういちどベートーヴェン」「合唱」という2冊が出てたみたいなんですが、ぜんぜん気づいてなくて。楽しみにしてたくせに申し訳ない(汗)。
でもまあこの「モーツァルト」は「いつまでもショパン」の後、という時系列になるようなので、まあいいかと読み始めました。
今作の主人公は「ショパン」にも登場した盲目のピアニスト。モデルはあの人でしょうねぇ。
コンサートツアーの最中、事件に巻き込まれ、そして容疑者となったところで、岬洋介が颯爽と現れ、そしてピアノを弾いて(笑)、事件を解決する――。
もちろん事件を解決していくミステリー(『どうしてあなたは嘘を吐いたんですか』という繰り返されるセリフがぐっと盛り上げてくれる)ではあるものの、実はその比重はあまり大きくなく(「ショパン」のときブログでも私は『ミステリー色は薄め』と書いています)、やっぱり音楽の小説なんだよな、と思います。犯人、わりと早めにわかっちゃったし(^^;
とにかくこのシリーズは、“音が鳴る”。
やはりその部分が一番楽しいのだと思います。それが最大の魅力だとも思います。
『踊ろう。もっと軽く。もっと楽しく。』
さらに今作を読んで感じたのは、言葉が的確ではないと思うのですが、「水戸黄門」のようなヒーローものだな、ということ(そう思ってたら巻末の解説にも同じようなことが書かれていて驚く)。
誰かのピンチに現れ、救ってそして去っていく。必殺技はピアノね(笑)。シュワッチ。
完璧な男として描かれる岬洋介だからこその立ち位置に感じました。
『「普通」を望む人間に許されることであっても、才能を持った人間に、怠惰や停滞は許されないのです。』
だから予定調和、そう言い換えてもいいのかもしれませんが、ヒーローだもん、それでいいんじゃないの、とも思います。
『臆病は勇気によって粉砕された』
ヒーローの物語はまだまだ続いていくそうです。
『自分以外のためだったら、案外がんばれるものです』
* * *
物語の本筋とは関係ないのですが、いい(?)言葉なので引用して書き残しておきます。
『思考停止。世の中には論理的に深く考えるのが苦手な連中が少なくない。そういう連中は誰かの言った、いかにもありそうなデマに飛びつく。論理的に考えるよりデマに乗って騒いだ方が楽だし、正しいことをしてるみたいで気持ちいいからだ』
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