2017年12月20日水曜日

今度はベートーヴェンだ。

「ドビュッシー」「ラフマニノフ」「ショパン」と続いてきたシリーズの新作、中山七里「どこかでベートーヴェン」を読了。
探偵役としてもちろん活躍はしていたが、特に「ショパン」で大活躍を見せた岬洋介の“最初の事件”という位置づけだ。

このシリーズはいつもそうなんだけど、「文字から音楽が聞こえてくる」ことと、事件よりも「人の感情そのものの謎」が解かれるという驚きがある。
今作もその点は間違いない。

とある地方の高校の音楽科に岬が転校生としてやってきた。

羨望、嫉妬、憧憬、畏怖。
あらゆる遠慮のない感情が、思春期の若者からはあふれ出す。
その感情は、小さなきっかけで180度逆にもなる。
転校生ってホント大変だ。実感。

だが、泰然自若。およそ他人の感情に対して不感症な岬である。だが、豪雨の日に起こる事件をきっかけに違った表情を見せてくる。それもまた若さなのか、幼さなのか、それとも大人なのか、あるいは真の冷静なのか。

そうした感情が交錯しているとき、先生が案外いいこと言うんだよ。ちょっと青臭いけど場面に似合うんだ。ちょい引用。
『神様なんて星の数ほど存在している(略)有名でなくても、みんなからちやほやされなくても、自分にスポットライトが当たる世界は必ずどこかにある。逆に羨ましいとか他人が成功したとかの理由で選んだら苦労するし、正しい努力ができなくなる』
『捨て去る勇気がなければ、何でもかんでも背負って身動きが取れなくなる。選択する勇気、諦める勇気が結局は可能性を拡げるんだ』


そして導かれる悲しすぎる結末。悲しすぎる運命。流れる曲は「悲愴」。

いやー引きこまれました。事件そのものはわりと単純?だった(←察してくれ)にせよ、奥のほうを完全につかまれてしまった。まあ少なくとも「ショパン」は読んでないと人物像が描けなくて困るだろうけどね。

そしてエピローグのラストシーン。最後の1行。パソコンの画面に映し出された文字列が描写された。
『〈どこかで■■■■■■■〉■■■■』
伏字だらけ(笑)。あああああっ書きたいっっっっ。でもこれ書いちゃいけないやつ!小ネタなのに感動してしまった!!

・・
・・・

読後気づいたこと。
どう考えても「THE END」な終わり方だった。でも岬洋介の物語は「ドビュッシー」に続いていかなくてはならない。そうでないと「ショパン」に行き着かない。このままではつながらないぞ???
その答えはあとがきに書いてあった。

〈次回、『もう一度ベートーヴェン』(仮題)をお楽しみに〉

おおっ。

0 件のコメント: