[042]
2024年が明けた。
思えばちょうど1年前の2023年元日の、電話が通じなかったあのときから一連のいろいろな事柄が起こったんだったな。わたしはそんなことを思いながら、あっちゃんのスマホを呼び出した。
『おかけになった電話は電源が入っていないか、 電波の届かない場所にあるため、かかりません』
えっ。また通じない?
落ち着け。わたしは自分に言い聞かせた。
このメッセージは普通の、電源オフや圏外のときのメッセージだ。去年みたいな滞納じゃない。わたし自身が支払ってるのだから間違いない。おそらく、本当に電源が入っていないんだ。
あらためて、固定電話のほうに掛け直した。ちゃんと呼び出し音が聞こえた。
『もしもし』
「あけましておめでとう」
『はい、おめでとうございます』
さすがに元日ぐらいは日付、認識しててくれるといいのだけれど。
「そういえば携帯電話、通じないんだけど電源入ってないの?」
『あら、そんなことないわよ』
「ちょっと見てみて」
『えーっと、通信サービスがありませんって出てるわよ』
わたしならスマホの再起動とか、あるいはSIMの抜き差しを試してみるだろうし、おそらくはそれで解決してしまう程度のトラブルだけど、再起動の方法は機種によっても違うし、ましてやSIMなんて。
あっちゃんのスマホにかけてくるような人は、固定電話の番号だった知ってるはず。固定電話が使えるのだから、無理をさせる必要もないか。
「そうかー。次に行ったときに見てみるから、気にしなくていいよ」
翌1月2日の夜、わたしの家の固定電話が鳴る。電話の主はあっちゃんだった。
『あのね、もうおめでとう言ったかしら?』
「うん、昨日ね」
『昨日・・・』
頭の中で何かを探しているような、そんな沈黙が流れた。
年末に介護認定の調査があって、マサさんとあっちゃんの認定はおそらくこの1月中には決まるはず。わたしは、マサさんの介護保険証が届いたら、それをさくら老健に渡すという名目で、およそ半年ぶりにふたりの顔を見に行こうと考えていた。
できれば2月の早いうちに。
ながいきセンターとも、そのタイミングであっちゃんの今後について相談したい、そういう話になっていた。
ところが、そんな話をしていた1月下旬、わたしの元に予想もしていなかった連絡がさくら老健から届く。
『所内で新型コロナが出ました。当面の間、すべての面会は禁止とします』
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