2020年7月17日金曜日

罪の声に現実と虚構が交錯する。

今年の「高校生ビブリオバトル」から、2冊目は塩田武士「罪の声」
序盤を読み進めている最中に映画化のニュースを見て驚いた。


昭和の未解決事件「ギン萬事件」。社長誘拐、青酸ソーダ混入、警察との対決、キツネ目の男・・・もちろんモチーフは「グリコ森永」だ。

京都でテーラーを営む男が、父の遺品の中から1冊のノートと1本のカセットテープを見つける。カセットに録音されていたのは30年も前のギン萬事件で使われた犯人からのメッセージを読み上げる子供の声――これはまさしく自分の声。なぜこれがここに。なぜ自分の声が。

一方、過去の未解決事件を特集する企画に駆り出された文化部の新聞記者。
あたりまえのように手がかりは見つからないのだが、30年が過ぎたからこそ表面化することもある。

自らの過去に怯えながらも真相を求める者。関係者の心情を思いながらも真犯人を追う者。
この2人を軸に物語は進む。

小さな点がひとつの線になり、ふたつの線になり、やがて交錯する
そのじわじわ真相に近づいていく高揚感ったらない。

これはあくまでフィクション。ノンフィクションじゃない。そう言い聞かせながら読まないと、現実と虚構の境目がわからなくなる。
心拍数が上がる。手に汗握る。たとえノンフィクションだったにしてもすでに「時効」だというのに。

描かれる過去の事象は、「グリコ森永」のほぼ“史実”なのだという。物語の登場人物と同様に、時系列を頭に入れながら読み進める。そして事件のあった1984年そして1985年のことも思う。個人的にもなかなか激動の時期である(^^;
舞台の中心は関西。そして1985年は阪神タイガース優勝とともに記憶されている。

分厚い本の残りページが少なくなってきたところでふと思う。

「これ、未解決事件なんだよな。結論どうするんだよ。解決しちゃいそうじゃないか」

やっぱり現実と虚構の区別がつかなくなってるみたいだ。

そして・・・クライマックスの“その先”へ――。
うわっそんなオチだったのかーーー!!!

・・
・・・

じっくりじっくりと、すごく時間をかけて読んだ。

リアルタイムにどんどんいろんな事件が起こってくサスペンスでは当然ないのだけれど、興奮し続けていたと思う。そして意外にも、静かに静かに、読み終えた。
こういう表現でいいのか自信がないけど、“すごく、おもしろかったー”

(余談)
高校生ビブリオバトルからの1冊目、「デフ・ヴォイス」の感想文」(?)へのリンクをTwitterに投げたら、著者ご本人から「いいね」が来てガチでビビった(笑)。うれしいやら恥ずかしいやら。


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