2018年5月30日水曜日

海の底より、レガリス襲来。

『春、寧日。天気晴朗なれど、波の下には不穏があった。』

前回読んだ「空の中」がとっても楽しかったので、話はつながってないものの自衛隊シリーズとされる有川浩「海の底」を読む。

タイトルは「海の底」だが、物語の主たる舞台、いや現場は「海のフチ」、つまり港だ。
海の底からやってきた巨大甲殻類の夥しい大群――エビ、いや巨大ザリガニのほうがイメージが近いか――が突如横須賀に現れる!岸壁から次々に上陸し、エサとして人間を捕食していく。まさにパニックSFだ。

「うえー、けっこうスプラッターでグロいぞー」

逃げ遅れた子どもたちを助けた2人の自衛隊員は接岸していた潜水艦に逃げ込む。だが周囲は巨大甲殻類に囲まれて出航はかなわない。

一方神奈川県警は機動隊を現地に送る。機動隊の装備ではではおそらく巨大甲殻類には太刀打ちができない。だがそれでもウルトラ警備隊ですね、我々は』という勇ましい言葉とともに市民の救出に向かう。

並行して巨大甲殻類の進撃を食い止めるべく防衛線が構築される。ゴジラ以来の伝統』の方法で。

潜水艦に篭城することになった子どもたちの運命は?救出作戦は?
前線の司令部は圧倒的な不利な戦況の中、どういう選択をするのか。
不穏な動きを見せる米軍の思惑は、そして自衛隊の出動は――?最初に官邸で行われたのが甲殻類の“呼称”を決めることだったのには大笑い。ちょっとシン・ゴジラを彷彿とさせる(^^;
そもそもあいつらは何なんだ!若き科学者がそのヒントを持ってくるのもなんだかゴジラ的。

めまぐるしく場面を移しながら、それぞれの場面で同時進行的にそれぞれの時間が過ぎていく。
“レガリス”と呼ばれることになった甲殻類はなぜ横須賀に現れたのか。そして「学習する怪獣」でもあるレガリスから横須賀を、関東を、日本を守れるのか。

「おおおっ、サスペーンスっ!」

ちょっと脱線します。ウルトラセブンやらゴジラやらの話が出てきたので。
ウルトラ怪獣でエビといえばグドンのエサでおなじみ(?)のツインテールなわけですが、ザリガニ的な怪獣はあまり記憶にないなぁ。どちらかというと初期の仮面ライダーに出てきてそうだが。いや、あれはカニ男だったか?(適当)
んでイメージしたのが、映画ガメラ2に出てきたレギオン!それも小さいほうのソルジャーレギオン。たしかハサミっぽい手で甲殻類っぽくて、何より大群だし。というわけでこのブログのタイトルは「レギオン襲来」から拝借しました。そういえばレギオンの大きいほうはマザーレギオン(ネタバレ的ヒントw)。

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対レガリス作戦については書きませんけど、相当にエキサイティングであったとのみ感想を書き記しておきたいと思います。作戦そのものよりも、その作戦に至る過程が特に。

『次に同じようなことがあったら今よりも巧くやれるようになる、そのために最初に蹴つまずくのが俺たちの仕事なんだ』

「くー、カッコいいぜー!」

もうひとつ、軸となって描かれるのが潜水艦の中。非常事態かつ閉鎖空間での人間関係。
年齢も家庭環境も違う子どもたち自身の社会。オトナとコドモという対比。一般市民と自衛官。そして男性と女性。

15人もいる少年少女の心理描写は素直にすげぇなと思うし驚嘆もするし。

有川さんは名前のせいもあってときどき忘れちゃうけど、女性の作家さん。
だからなのか女性の描き方がとっても細やか。それに対して男性である僕はドキっとさせられる――無知や無自覚を突きつけられたような感覚――のだけど、同時に作中の男性陣も同じようにドキっとされられてて(笑)。でもちっともその表現に嫌味がないんだよね。
一方で社会に対する皮肉っぽいこともしっかり書いたりなんかして、なかなか辛辣な一面もあったりします。

さらに有川さん、自らをラノベ作家と称しているらしい。この作品も「大人のラノベ」なんだそうだ。そう考えると、ラストシーンはお見事というしかありませんな。

「おー、そういうラストかー。あそこからつながるのかー!」

・・・何があるかは書きませんけど(笑)。

この作品も楽しませていただきました。はい。

*  *  *

と、ここまで書いた後に巻末解説読んだら、ガメラ/レギオンのこととか細やかに説明されてた。うう、それ読んでから感想文書いたわけじゃないんだけどなぁ。パクリっぽいよなぁ・・orz..



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