友達グループのひとり、というポジションでの付き合いは2年になろうとしていた。
あくまで友達という位置づけを崩さずに、でも俺はいつも視線の隅で志野を追っていた。
口に出したら、もしダメだったら。俺がただフラれるだけならいい。でもこのグループに亀裂を生じさせるかもしれない――。
まるで安いドラマのような考え方だ。
それがただの言い訳だということが今ならわかる。あのころの俺にそれを指摘してやりたい。
ある日俺は志野と飲みに行く約束をした。
どういう経緯だったか細かくは覚えていないが、バイト代が入ったと浮かれる俺に志野のほうから声をかけてきてくれたんじゃなかったか。たまたまその場にいた仲間たちの都合がつかなくて、ふたりになった、そんなことだったと思う。
俺は偶然に感謝した。
あの夜もSBだった。たぶん、特別な夜じゃないと取り繕ったんだと思う。
そして約束の時間ちょうどに木の扉を押して入ってきた志野は、ひとりではなかった。
「みんなのほうが楽しいと思って」
志野のことだ、俺が彼女に好意を寄せていたことには気づいていたんだろう。
そして彼女のことを見続けていた俺は、彼女の好意が別の方向に向いていることに気づいていた。彼女もそれを隠すようなタイプではない。認めたくはなかったけど。
そこにいたのは、甘木。
認めたくなかった事実が目の前に現れた。
甘木はいつものように穏やかな表情で志野の視線を受け止めていた。
俺は視線を送る場所を見つけられず、ただグラスばかり見てたかもしれない。
「おい、今日はペース早いな」
こういうときは顔で笑って心で泣いて酒を飲む、それが相場ってもんだろ。
「バイト代入ったからね、バイト代」
この期に及んで作り笑いを浮かべる自分のことを、俺はいやだった。
結局その夜はいつものようにワリカンで会計して、俺たちはエレベーターで地上へ降りた。
そしていつもより少し酔った俺は、やけに楽しそうに前を歩いていく志野の背中をぼんやりと眺めていた。とても軽やかだ。ちょっと宙に浮いてるんじゃないかと思うほどに。
その視界に突如として甘木が入ってきた。
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