実は本屋で見かけたとき、表紙とタイトルを見た段階では「ノルディックコンバインド(複合)」かな、と思ったですよ。これまでもオリンピックやワールドカップの舞台で結果も出てる日本国内でもそこそこ有名な競技ですし。さらにいえば「ルール変更」の影響があった競技としても認識されてますからね。
それがなんとクロスカントリースキーが題材とは!!マニアックというかチャレンジャーというか(^^; 喜んでるんですよ、僕。
これまでも陸上ロードレースの世界などを描いてきている作家さんですから、冬の長距離種目がどう扱われるのか、期待が膨らみます。
というわけで堂場瞬一「ルール」を読みました。
竜神真人。オリンピックゴールドメダリスト。
ケガによって引退をして2年。その竜神が突然競技に復帰をするという。
高橋大輔(こちらも一応ウインタースポーツだ)が復帰するというニュースが流れてきたとき、まさに読んでた。
理由は、わからない。
同級生で新聞記者でもある杉本がそれを周囲への取材によって一歩ずつ探っていく。
ゴールドメダリストの復帰に周囲は沸き立つだけでなく、困惑も抱えていて。
と、ここで気づきました。
これまで堂場さんのスポーツ物といえば、競技者の競技中の感覚を微に入り細に入り描くことで迫力を感じさせてくれてたんだけど(たとえば水泳を描いた「水を打つ」を読んだときに僕は『「競技中の感覚描写」はすごくって、こっちの頭の中も大汗』と書いてます)、今作では語り手である杉本記者が著した「未完の伝記(タイトル:ハードバーン)」の内容が競技シーンになる。つまり競技者の目線ではなく観る側の視点だ。
今回の場合は競技者自身に謎があるわけで当然とはいえ、ちょっと新しいなと思ったり。それでも十二分に迫力の50kmだ。
スーパースケーティングなんて言葉で出てくると他人事ながらちと嬉しい。
取材の中で見えてくる竜神の真の目的とは。そして「ルール」とは――。
どの競技のそうだはと思うんだけど、特にウインタースポーツってやつは、まぁしょっちゅう大きくルール変わるような印象がある。有名なとこだとスキージャンプもそうだし、たとえばアルペンスキーならサイドカーブとか。フィギュアスケートなら採点基準なんかもそうか。
ただでさえ相手が自然なのにそれに翻弄、とまでは言わないけど、右往左往させられる選手はたまったもんじゃないだろうなぁ。
でもそれに打つ勝つというか、飄々と乗り越えてくる選手もいたりするんだよね・・。
・・・「ルール」とはそういう話ではなかった。
もうちょっと根源的なルール。勘のいい方ならおわかりかと。
その背景にあるのは無責任な期待と重圧なのか。あるいは別の。
やがて本人の言葉として語られる真の目的。そして“胸が締め付けられる”ようなラストシーン(涙)。
堂場さんらしい、ある意味でロマンティックなエンディングだ。
すごくせつなくてせつなくて。
だけどこれがもし現実だとしたら――でも、でも、ルールは「ルール」。ルール違反を僕は認めない。
・・
・・・
とはいえ、きっかけは何であれクロカンに興味を持つ人が増えたらいいなぁ。
僕自身もクロカンスキーでさんぽ、してみたいとここのところ思ったりしている。本格的にやりたいわけでは断じてない。
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