2016年7月6日水曜日

ロードムービー。

キョンキョンのオススメ第8弾、辻村深月「ロードムービー」を読み終えた。4つの作品を収めた短編集なのだが、それとは別に、冒頭にたった数ページの超短編「街灯」が収録されている。

ロードムービーとは、もちろん旅の物語であり冒険の物語。そしてその中での成長(あるいは「認識」)の物語。

表題作「ロードムービー」はもちろん、他の3作でも描かれるのは男と女の――大人も子どもも若者も――成長の話。

その手前にはもちろん苦悩もあって。
巻末の解説を読んでなるほどと思ったのは、いわゆるカーストの、頂点側の苦悩も描いていること。「お利口さんね」と言われたい子ども時代を思い、ちょっと胸の奥のほうがしくしくした。その解説の最後にはこう記されている――「だから、安心していいんだよ」。確かにそういう本だった。

話はそれるが、「ロードムービー」の主人公、小学生のトシが理科の勉強が嫌いな理由として「美しい夕焼けを見て感動するとき、あの赤い光がどこから来るかなんて知りたくない」からだと言ってて、こっちが感動した(^^;

・・
・・・この先ネタバレっぽくなります。

4作目の「雪の降る道」の最後の章の題が「エピローグ、またはプロローグ」。それを目にしてはたと気づく。そうか、どの物語も、それぞれのエンディングの先で本のプロローグとして掲載されている「街灯」につながっていくのか。「街灯」はどの話のエピローグとしても成立してるじゃないか、と。

それに気づいたときに、この辻村深月という作家の凄みがわかった気がしたのです。

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