2021年1月22日金曜日

虹のスタジアム。

古本屋でタイトル買いした、青井夏海「スタジアム 虹の事件簿」を読了。
著者名は、浦和レッズのスタジアムDJも務める朝井夏海さんと瓜二つな字面です。まったく関係ないと思いますが(^^;

虹とベースボールスタジアム。こないだ読んだ「虹のふもと」とイメージは似通いますが、まったく違うタイプのお話です。ちなみに「~ふもと」のほうのチーム名はレインボウ、こちらはレインボーズ。

スポーツもので、ミステリーで、しかもユーモアミステリー。満塁ホームランレベルで好物です(笑)。
満塁ホームランと言えばグランドスラム。「虹のグランドスラム」って歌もありましたね。懐かし。


前オーナーの逝去に伴って担ぎ上げられた、万年最下位レインボーズの若き新オーナー。
野球知識がゼロなので、日々スタンドで「勉強」しているのだが、そのスタンド(古のパ・リーグ並みにガラガラなのだ)にやって来る来場者の言動から、事件の匂いを見つけ、そして解決へと導く、あるいは解決への糸口を提供する、という安楽椅子探偵モノだ――実際にスタンドで事件が起こるケースもあるから必ずしもそうは言えないけど。

謎は全部で5話。
ミステリーは、「おおそうか」みたいな感じで、気楽に読み進められます。謎解きがすごく明快なので、ツッコミを入れるまでもなくさらっと読んじゃう感じです。

ところが、そのミステリー部分とは別に、ベースボールのほうでも、ある意味「異常事態」が起こってきます。
4話目あたりから、最終話にかけて、そこがぐぐぐっと盛り上がってきて・・・並行するから、読者としてはちょっと忙しい(笑)。

最後の事件がスッキリと無事解決し、そしてグラウンドのゲームは延長へ――そこでもうひとつのドラマが!ああここでそう来るのか!!(ナイショ)
目線はあくまでスタンドからの目線なので、選手の気持ちなんてわからない。そこで起こっている事象だけしかわからない。そのスタンスがまたいい。

ラストまで読み終えて、著者あとがきを見て驚いた。なんとこの作品、元は自費出版だったとか。自費出版から文庫化されて版を重ねてきたなんて(僕が読んだのは6版)、それはすごいし、それに十分値するな、と。

楽しませてもらいました。

*  *  *

本編とは直接の関係はないけど、登場人物たちのこと。
連絡を取るのには家に電話を掛ける。同窓会名簿作ったり、アドレス帳を持ち歩いたり、引っ越すと音信不通になってしまったり。
個人情報とか携帯電話とか・・・そうじゃない世界って本当にあったんだろうか。なんかふわっとした気分になった。
そうしてすれ違うからこそ、そこにミステリーが生まれるのかもなぁ。

あとすごいのは、野球のルールを知らないであろう読者にもきちんと解説してくれるトコ。
わりとめんどくさいルールが最後の最後に出てきて、それもちゃんとかみ砕いて説明されてた。この部分には賛辞を送りたいと思います。

かたや野球ファンにとってもすごく楽しめる。
いつの間にかレインボーズの各選手の特徴が頭に入ってるし、淡々と描かれているはずの試合内容も、まるで選手が見えるようで!!
野球好きの方なら走塁の大切さはご存じだろう。それについてずーっと描かれてるのが個人的にツボ(^^;


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