2021年1月13日水曜日

青い夏の夜と朝と光と。

今回今さらながらに見てみた映画は「きみの鳥はうたえる」です。
このタイトルはThe Beatlesの曲からだそうですが、原作には登場するとのことですが、本作には登場しません。なのでなんのことやら(笑)。

バイト先で知り合った「僕」「佐知子」。僕とルームシェアをする「静雄」。ひと夏の3人の物語――あえて分類すると青春映画ということになるだろうか。ある程度オトナになってる3人だし、夏の話だから「青夏」かな。

夜ごとに酒を飲み、夜の人工的な灯りの中で、ある意味自堕落に、かつアクティブで、それでいて漂うように生きる3人。
遊び明かした朝の、まだ夜の余韻を残したような街の灯りと、ふらふらと歩く彼ら。始発の市電に揺られる彼ら。低く柔らかく射し込む朝日。

象徴的に描かれる幾筋もの光――それは、はるか以前に経験した場面を逆光の中に見せられているような錯覚さえ。

若さゆえの危うさ脆さを強く感じるものの、この映画の中では大きな事象が起こることはない。
さらに説明的で余分な描写は極力排除され、どこまでがセリフだかわからないような映像。だからこそそこにリアルを感じてしまうのかもしれない。

それを演じた役者さんにもまたリアルと凄みを見せられた。

無頓着なようでどこかに暴力性を垣間見せる僕。笑顔の中に狂気と達観の両方を見せる静雄。そして、軽薄でありながら真摯さが表情ににじむ佐知子。

柄本佑と染谷将太の凄さは知ってたけど、大発見は佐知子を演じる石橋静河!!
クラブでのダンスシーンは圧倒的だった。カラオケの「オリビアを聴きながら」(ハナレグミVer)も強烈。

だけど、とにもかくにもラストシーン!

「僕」と向き合った佐知子の言葉を待たずにエンドロールが流れ始めた。
「うわー、この後なんて言うんだぁぁぁぁぁ!」と頭を掻きむしった。こういう終わり方の映画はあまり好みではない。でも、この映画はこの終わり方でいいんだと思う。
佐知子の表情に「喜怒哀楽が同時発生」してたんだもん。圧巻、そのひと言。参りました。

考えさせられるというよりも、「いいんだ」と思えたあの惑いの表情こそが若さ、なのかもしれないな、と。


いやはや。豪快に心を持って行かれた一本でした。

舞台となった函館、そして光が象徴的に描かれる映画だなぁと思ったら、原作・佐藤泰志、製作・函館シネマアイリスが、「そこのみにて光輝く」と同じだった。そうかそうか。この見終わったあとの感情とか、超納得。


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