ほしおさなえ「活版印刷三日月堂」シリーズ、「星たちの栞」に引き続いて、「海からの手紙」「庭のアルバム」「雲の日記帳」と続編を大人買いして読み進めています。
理由はわかりませんが、やっぱりこの作品は僕にとって“沁みる”作品だなと思うのです。
『なんでこんなことになってしまったんだろう』
何かの問題を抱えてたまたま三日月堂を訪ねてきた人が、店主である弓子さんにそれを解決してもらうわけではない。特別な何かが起こるわけではない。ただ何かに気づき、何かがほんの少し動き出す、ただそれだけなのですが。
・・
生まれてすぐに亡くなった――『この世界にあるものをなにも見ないうちに消えてしまった』――姉がいたことを突如知らされた小学生の少年が主人公。
泣いたね、この話は。ちょっと自分に置き換えたりなんかもしたりしてね。きょうだい、か。
『本には文字しかない。色も形も重さもない。でも、その言葉が、わたしたちのなかで色や形や重さをもったものになる』
シリーズのもうひとつの魅力は、印刷されたものが「誰かの手に渡り」、それが次の物語につながっていく、という全体的な構成。
活字は印刷物となってその形を留め、なにがしかの意味をもったものとして伝わっていく。すごく素敵じゃないですか。
つまり、全体に流れるテーマとして『継ぐ』というものがある。
形になることで、誰かから誰かに受け継がれていく。考えてみればあたりまえのことだけれども、世代が代わるとでもいうのか、それは時間の経過ともリンクすることであり、となると寿命というのは有限であって・・・継いでいくということは、必ず「誰かがいなくなる」、それに気づいたときに、この本の本質に近づいたような気がしたのです。
感動のラスト、と帯に書かれた4冊目。エンディングに向かっていく。弓子さんがやりたがってたことが、少しずつ現実になっていく――ある意味想像どおり。
そしてこれまで作られてきた「縁」が「円」になっていく。
文字どおりの“大・団・円”。
最初の1冊だけでも十分楽しめたけど、ここはやはりシリーズ4冊をすべて読んでもらいたい、そう強く思ったりしています。
『書きたいことを思いつく。けど、言葉にしようとしてもうまく言えなくて、ちがうことになってしまう。読み返して見ると、言いたかったこととずれてる気がする。その文だけ見ると、筋は通っている。でも、やっぱりちがう、と思う』
『言葉はいつもいつも人と人のあいだにあって、所有することはできない』
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