2018年8月21日火曜日

僕は君を。

なんとも心に迫ってくるようなタイトルの一冊、長谷川夕「僕は君を殺せない」を読了。

読み始めて最初の印象が「ふわっとしてて」。とらえどころがないというか、つかみようがないというか。
登場人物の関係性とか背景に具体的な像を結ばせないように、あえてそうしているような気はするんだけども。
ふわっとしている理由のひとつは、「ひとり語り」の場面において「です・ます」を使っているからだと思う。ひとりなのに誰かに語りかけているような、なんとも不思議な空間。

中盤に至って全体像は見えてくるんだけど、半分浮いているかのような印象に変化はない。
本屋のPOPでは「誰が君で誰が僕か」なんて書いてあったけど、それはわりとすぐにわかるぞよ。

その感覚が徐々に“居心地の悪さ”になってくる。物語の中に居てはいけない、そういう僕の本能みたいな。

サスペンステイストの物語は、そのままクライマックスに向かうのだけれど、なんと題名でネタバレしてるじゃないか。まさかそんな含みのまったくない題名だったとは、これを選んだ自分の直感にガッカリだ。

申し訳ないが、居心地悪いだけだった。
表題作のほかに短編が2編収録されているが、いずれも響くまでには至らず。同じように心地悪さのほうばかり残る。

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