「木洩れ日に泳ぐ魚」に続いて恩田陸を読む。「Q&A」。クエスチョン・アンド・アンサー。
『それでは、これからあなたに幾つかの質問をします。質問の内容に対し、あなたが見たこと、感じたこと、知っていることについて、正直に、最後まで誠意を持って答えることを誓っていただけますか。』
何の説明的な描写もない。ひたすらに繰り返される問いかけと、答え。質問者と回答者という存在だけ。
何を見ましたか。
どう思いましたか。
どうしてですか。
それでどうしましたか。
物語は全編、質問と回答だけで綴られていく。回答者は“大惨事”の目撃者であり当事者。その現場で何が起こっていたのか、少しずつ明らかになってくる・・・・いや、明らかになってきたような気がしてくる、という言い方のほうが近いか。
人間の記憶と証言ほどあてにならないものはない。一方で人間の感覚はおそろしく正直で正確だ。
そして言葉というものの持つ具体性と抽象性の二面性。読者の脳内に、それぞれ違う像が結ばれていくはずだ。
なんという吸引力なんだ。どんどんページがめくらされる。
途中まで読み進めてふと思う――この質問者はいったい誰なんだ?何者なんだ?
読み進めることでマスコミでも警察でもないことはわかる。
明らかになる事象と、深まる闇。明と暗。なんなんだ。なんなんだ。
中盤をすぎると質問者の気配が違ってくる。回答者に対しての何がしかの感情が、言葉の端々に見え隠れしてくる。Q&Aの世界が外界に広がり始める。
余計に混乱してくる――この質問者たちはいったい誰なんだ?何者なのか?
変化してくる質問者と回答者の関係性や言葉が、読者である僕の居心地の悪さを増大させてく。
なんなんだ。
なんなんだ。
結局なんだったんだよ。
予定調和では終わらない。それはいいんだが、で?なんなんだよぉ?
ある意味、実験的な小説と言ってもいいのかもしれない。それが僕にとっておもしろいかどうかは別の話だ。
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