2016年5月13日金曜日

オンボロな「小暮荘」で。

キョンキョンのオススメ第6弾、三浦しをん「小暮荘物語」を読了。
世田谷代田。住宅街にひっそりとたたずむ木造2階建てのボロアパート「小暮荘」。そこに住まう人々(と犬)とそこに関わる人々(と犬)の、静かだけれど激情の物語。人物ひとりひとりにスポットを当てた連作形式になっている。

登場人物は、皆どこかヘンだ。ネジが外れているというか、ボタンを掛け違えているような。そして行動よりも何よりも、その腹の中は相当にエキセントリックだ。

だけど、そんな彼らがそんなに不思議な人物だとは思えない。
誰にでもある(少なくとも僕の中にはある)感情を、ほんの少し増幅して見せられているだけなんだろうと思う。

だってすごく根源的な感情なんだもん。

『一人一人抱きしめてあげたくなるほど愛おしい登場人物が、恋愛や性や癖の問題を抱えながら、真摯に誠実に他人との関わりを求めてる』
―― 小泉今日子

文庫版の巻末にはキョンキョンの書評がそのまま掲載されてます。必読。

中でも、大家さん(小暮さん)のエピソードと、小暮荘の庭に暮らすジョンを見つめる通りすがりのトリマーさんのエピソードは、特に好き。細かくは書かないけど、一方は正直すぎるし、一方は切なすぎるし。

三浦しをん、さすがです。

それぞれのエピソードによって文章のトーンが微妙に違うこともさることながら、たとえばたった数行で違和感なく時間と場面を移動させたり、ドキッとするような文字列が唐突に現れたり。

じんわりじんわり読ませていただきました。

『注意せよ。取っ手のついた器をわざわざ両手で包み持つような女は食わせものだ。』
『つながり溶けあう手段は年齢とともに変わっていく。』

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