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そんなマサさんの体調をよそに、土地の売買の話は着実に進んでいた。
登記移転の手続きが完了し、その確認書類が自治体からマサさん宛に送られてくるとの連絡が司法書士からあった。
『本人限定受取郵便で届きますので、そちらに押印して返送してください』
やけにあっさりした文面だったが、調べてみると実はこれが少々手間だということがわかった。
まず郵便局から「こういう郵便物が届きますけど受け取りはどうしますか?」というような通知のハガキが届く。まずはこの通知そのものをわたしの転送してもらうよう、グッドライフに依頼をした。2週間以内に受取をしないと送付元に返送されてしまうので、時間がない。
その内容を確認し、もちろん郵便局に受取りには行けないので、ネットから「配達してください」という旨を通知した。
受取りには本人確認が必要になるので健康保険証などを使って受け取ってほしい、さらにそれをわたしに送ってほしいともう一度グッドライフに依頼した。
「すいません、お忙しいところ何度も何度も」
2週間弱の時間をかけて、ようやく登記移転の確認書類が手元に届いた。
マサさんの実印を押し、司法書士に送付した。これでこちら側の手続きはすべて完了だ。あとは入金を待つばかり。
そんなこともあって、ここのところマサさんのことばかりで、あまりあっちゃんのことを考えている余裕がなかったのだが、いいタイミングで担当のケアマネさんから次のケアプランの策定を含めて、現状についての報告があった。
『お母様ですが、最近ぼおっとしている時間が長いようなので、脳トレとか、そのあたりをお勧めしてみようと思います』
「それはぜひ。こちらからもときどきパズル本などを送ったりもしてるんですが、あまりやってないかもしれないので」
『あと、運動は先日ロビーにあるエアロバイクを漕いだりされてましたのでそちらも引き続きと思っています』
体を動かす楽しみを見つけてくれれば案外長続きしたりするのではないだろうか。
「体を動かすのはもともと好きだと思いますので、ぜひお願いします」
『お父様のほうも病院まで様子を見てきまして、ようやく食事が始まったようです。自分で食事ができて、そして体力が戻ってくれば退院の目途も立つのではないか、そんな状態だったと報告を受けています』
マサさんはそう簡単に退院になるとは思えないが、悪化しているのでなければひとまずこれは朗報だと思っていいのだろう。
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