『時は元禄。』
この書き出しで僕の中の「時間」と「世界」は一気に江戸へ動いた。
時代小説っていうより、エンタメ時代劇のノベライズみたいな感じかもしれないなぁ、なんて思いながら読んだのが、平谷美樹「貸し物屋お庸――江戸娘、店主となる」。
ひらや・よしき、か。難しい。
簡単に言うと「おもしろいおもしろいおもしろい」だった。
ちょっとしたファンタジーも含めながらミステリー風味も持った、昔テレビで見てた楽しい時代劇そのままじゃないか、とね。
大工の棟梁の十五になる娘。箱入りだけど男勝りな「お庸」が主人公。
自宅に「押し入り」があったことから、意を決して暖簾をくぐったのが“ないものはない”と言われる「貸し物屋」――つまりレンタルショップ。
んで、いろいろあってその支店を任されることになるわけだ(サブタイトルにあるからネタバレではないよね)。
不思議な客が訪ねてきたり、不思議な注文があったり・・・そうして巻き起こる事件にお庸が向き合っていく、という話。
時代小説なんだけど、かぎりなく現代語に近い形で書かれているので読みやすいし、逆に当時の単語なんかが素直に頭に入ったりする楽しみもあった。別宅を表す「寮(りょう)」とか、支店のことを「出店(でだな)」っていうとか、それからそれから・・。
キャラクターもなかなか魅力的で、本店(ほんだな)の主人――味方なのに素性がしれない感じだ――とか、その部下の半蔵(いかにもな名前だ)とか、たまらんね。
一話完結。そんなところもテレビドラマ風かも。
後味もすんごくいい。勧善懲悪もあれば人情噺もあって。てやんでい。
江戸の庶民の死生観みたいなのもちょっと感じたりする。
続編も出てるみたいだ。ぜひ読み続けたいと思う。軽くぐんぐん読めちゃうし(^^;
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