2017年10月11日水曜日

「怒り」、とは。

今回今さらながらに見てみた映画は、邦画サスペンス2本立て。

まずは、「怒り」
吉田修一原作の映画化。豪華キャストでも話題になりましたな。

東京八王子で起きた殺人犯が逃げ続けているという報道がなされたまさにその時期に、新宿、千葉、沖縄に同時多発的に現れる謎の男。

3つの土地で描かれる物語は、互いにいっさい干渉しない。ただ並行しているのみ。

報道される犯人像とのそれぞれの男の奇妙な一致。
犯人の手配写真が何度も何度も映し出されるのだが、松山ケンイチにも、綾野剛にも、森山未來にも見える不思議。彼ら同士はまったく似てないのに。

この人が犯人じゃなきゃいいのに。見ているこちらはそう思いながら、その「よそ者」の人物像と謎と、そしてそこに暮らす人々との関わり合い――愛憎劇とでもいうのか――に巻き込まれていく。

謎の男も、土地の人も、それぞれ複雑な感情を宿している。人間だもの。
その中で「怒り」こそ、たぶん一番ストレートな感情。オブラートにも包めず、うやむやにもできない、湧き上がったが最後、発露せずにはいられない感情。
どうしてこういうタイトルなのか、ずーっと考えながら見てた僕なりの結論だ。

そして誰よりもひねくれずにあらゆる感情をストレートに出し続けた人に未来(あ、未來って言っちゃったね)が訪れるという、ある意味皮肉でひねくれたラスト――。ああ、ネタバレ。

重いしキツいけど、これぞ圧倒的な日本映画という感じだった。
と同時に、原作のほうがもっともっとすごいんだろうなとも想像しちゃう。読んだら胸が苦しくなるのは確実だ。

ところでエンドロールでは渡辺謙の名前が一番上だったけど、実際は誰が主役だったんだろ。まあ誰でもないし、誰もがすごかったし素晴らしかった。
謎の男3人はもちろん(綾野剛の何もしてなのに艶っぽいとことか)、特にその3人と最も関わっていく役も。平気なふりしてタイトロープを渡るような妻夫木聡、少女の姿で大人の女を垣間見せる広瀬すず、細くて折れそうな芯だけで見事に立ち尽くす宮崎あおい、枚挙に暇がないとはこのことで。

*  *  *

もう1本は、「ミュージアム」

自らをアーティストと名乗る連続殺人犯「カエル男」と、それを追う刑事。簡単に言うとそういう図式で。

映像は暗く、いつも雨音が聞こえる――カエルなんで。
「ぎゃーっ」っていう場面はすごく多いから、心拍数はそれなりに上がっちゃう。イヤミスならぬ、イヤサスペンスだ。
刑事役の小栗旬の「怒り」が湧き上がってくる。見ているこちら側も巻き込んで。

でも「ん?」と思うこともありつつ、さらに見終わってみると「で?」と。

ちょっとあの名作「セブン」を連想させるものの、なんだかそこまでのこともないような。うーん。

劇場のでっかいスクリーンと大音響で見たらちびりそうだけどな。

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