2017年6月28日水曜日

さんぽニスト、本を読むの巻。

『「おれたちは、生きているから、歩く。そいつに理由はない」』

キョンキョンのオススメ第20弾、石田衣良「明日へのマーチ」を読む。

山形の工場で派遣切りにあった4人が、ふとしたきっかけで東京まで歩いていくことに。
その徒歩の旅の中で、4人はそれぞれと向き合い、さまざまなことを考えていく、そういうロードムービーならぬロードノベルだ。

石田衣良で4人というと「4teen」を思い出すけど、人物描写はさすが。描き分けというのか、まるでパーツのような扱いだった派遣社員が、それぞれ別の個々の人間であるという当然の事実が時間経過(距離の経過)とともに見事に浮かび上がってくる。
それはどこか、自分とも重なるようで、それぞれにそれぞれの思い入れを持つようになった。投影した、ということかも。何しろ、
  • ひたすらに歩く男
  • 見た目ばかり気にする男
  • 上手に夢が描けない男
  • そしてブログを書く男(爆)
その中でも僕は「陽介」という最も“普通”のキャラクターに特に感情移入してしまった。

『困ってしまった。生まれてから、ずっと夢というものをもったことがないのだ。』

それ以上に、散歩好きの僕にとって、歩くという行為そのものの描写が強烈に飛び込んで来た。僕の場合は重い荷物も背負わないし、野宿もしない日帰り散歩なんだけどね。

『しだいに午後の黄金色が日ざしに混ざってきた。』

歩いているときはできるだけ多くのものを目に焼き付けようとしている。でも、「何もない」ということも多い。4人と同じように、僕もいろんなことを考えてきた。

『徒歩の旅は耳を澄まして身体の内側の声をきく旅だった。』

散歩好き+ブログ書きである僕が少々身につまされたのはこれ↓。すいませんが、少し長めに引用させていただきます。
『伸也はほんとうはブログに書くネタを集めるために、東京までの徒歩旅行を続けているのではないか。生きることがネットの素材になってしまっているのだ。よりよく生きるための道具としてネットがあるのではなく、現実がヴァーチャルな世界に奉仕するための素材としてある。すべてが逆転している。』


旅は山形から新潟、そして長野から群馬、埼玉、東京へ。そうそこは中山道。僕も中山道を彼らと逆向きに歩いている――。
余談。彼らの旅がひとつの転換を迎える長野県飯山市の交差点。野沢温泉の帰り道にときどきクルマで通りかかります(^^;

たぶん、このタイミングでこの本に出会えたのはキョンキョンが見せてくれた奇跡。そしてなんだか救われたような気分だ。

『ていねいに一歩ずつきちんと味わって歩こう。道も、風も、草も、ちゃんと感じて歩こう。』

僕の思いが言葉になってた。明日のマーチは、明日へのマーチだ。

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