キョンキョンのオススメ第19弾、道尾秀介「笑うハーレキン」を読了。
ハーレキンってのは笑顔の仮面を被っている「道化役者」のことなんだそうだ(よくよく調べたら、かの「ハーレクイン」だ)。だけど本当は笑っていないんじゃないか。その仮面の下には別の表情があるんじゃないか、そういう話。
彼の目にはいつも仮面を被った疫病神が映っている。ファンタジー?いやいや、読者には東口の心情が作り出した幻影だとわかる。むしろ非常なほどの現実だ。
そこにひとりの押しかけ弟子が現れることをきっかけにしてホームレス仲間との関係性といった周辺に少しずつ変化が生まれ、さらに自らの過去や想いといったものと少しずつ向き合うことになる――それはまさしく疫病神との会話そのものだ。
『そこにあるのは孤立をともなわない孤独』
疫病神はそう言う。
誰しも仮面をかぶっている。そこに誰かがいても結局孤独なんだ。そう言うのだ。
それはそうなのかもしれないけどさ、主人公のことを思うと、これは読んでて単純につらい・・・。
が、そんな中届いた家具の修理依頼から予想もしない方向に話が動き始める。「え、ミステリだったの?もしかしてサスペンス・アクションなの??」・・・???
そうした怒涛の展開の中、東口はついに疫病神の仮面を剥がし――。
疫病神の本当の顔はある程度想像できた。できたけど、案の定それはつらい現実にほかならなくて。でも、そうしなきゃならないんだよな、と東口を応援する気持ちになって。
うまいこと感想がまとまらない。なのでエピローグの文章をお借りしたいと思う。
『どうせ素顔を覆うなら、笑顔で覆ったほうがいい。』
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実は初めての道尾作品。今までは食わず嫌いって感じでしょうかね。
驚いた。こんなに読みやすい文章を書く人だったのかと。テレビの中で見る少々めんどくさそうな(失礼)イメージとはずいぶん違う。テレビとかで人となりを知りすぎてしまうと、作家さんの顔が思い浮かびすぎるというのが食わず嫌いの原因になってる気がする。
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ネタバレにならないようにぼかすけど、物語の中ほどである男の遺体が発見される場面がある。川の中で。いつもように酒を飲みながらその描写を読み、自分の知った、いや知ってるような事象を思い浮かべ震え、そして気づかぬうちに嗚咽してた。
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