2024年6月9日日曜日

翳りゆくひと。[036]


[036]

8月29日夜、ながいきセンターのセイコさんからメールが届く。
あっちゃんのもの忘れ度合いが進行していて、通っているクリニックでの簡易テストで18点、すなわち軽度認知症との判定だったという。1月のテストでは27点だったことを考えると、かなりの変化だ。あのときはマサさんが17点だったのだから、それに近い数字になってるということか。
クリニックに紹介状を用意してもらい、大学病院の外来に行くことになるだろうとも書かれていた。

それに対しては「よろしくお願いします」としかわたしには言うことができない。「できればデイサービスの利用なども」と書き添えた。ひとり暮らしが悪影響にならなければいいのだけれど。

翌日にはさくら老健のケアマネ、コハマさんから電話。マサさんのほうは順調らしい。

『リクライニングのない車椅子にも座れるようになっています』
『スタッフとのコミュニケーションもできています』
『週に数度、奥様がいらっしゃったときは笑顔も見えています』

あっちゃんは毎日面会に行ってるって言ってたけど、違うんだね。でも時間感覚は特に苦手だからそれはしょうがない。むしろときどきでもちゃんと外出をして、バスに乗って面会に行くという行動ができていることを喜ぶべきだろうな。

『ところで、ペースメーカー手帳をお持ちいただきたいのですが』
「いえ、わたし自身も確認したことがなく、どうやら紛失してしまっているようです」
『今後のためにもご家族のほうで再発行の手続きをしてください』
「わかりました、対応いたします」

2月の時点ですでに紛失の話は出ていたが、わたしは見て見ぬふりをして今日まで来てしまっていた。重い腰を上げて再発行の方法を調べたが、どうやら病院で再発行ができるらしい。
問題は、それがどこの病院か、わたしがまったく知らないということだ。あっちゃんに聞くしかない。

「どう、調子は?」
『毎日お見舞いに行ってるわよ』

自信満々に言い切っている。

「まだ暑いから、暑い日には無理に行かなくてもいいからね。スタッフさんたくさんいるから心配ないから」
『そうね』
「ところでさ、マサさんの心臓のペースメーカーの手術ってどこでやったか覚えてる?」
『どこだったかしらね、えーと』
「もうずいぶん前になるよね」
『ああ、駅の裏のほうのはまの病院よ』
「そう、ありがとう」

短期記憶以外ならやはりまだまだ大丈夫だ。
わたしはその病院のことをネットで調べて、代表電話に連絡をした。調べてもらった結果、マサさんの手術をしたことは確認ができて、ただペースメーカー手帳の再発行は、今現在定期的に検診をしている、別の病院のほうで対応してほしいとのことだった。

紹介してもらったこぼり内科は、循環器内科の専門医のようだ。なるほど。
ホームページから問い合わせを投げたら、その数分後には担当のドクターから折り返しの電話がかかってきた。なんと対応が早い。あっという間に再発行のお願いは終わってしまった。

「父は今さくら老健に入所していて」
『そうでしたか。次回の検査は12月1日の予定ですのでよろしくお伝えください』

12月か。ずいぶん先のような気もするし、もうすぐな気もする。そのころ、わたしたちを取り巻く状況はどうなってるだろうか。

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