2017年5月6日土曜日

神様の裏の裏の顔。

いきつけの本屋さん、品揃えも内装も何も変わってないのに、いつの間にか看板だけが「●SUTAYA」になっててびっくりする今日このごろです。その本屋さんでプッシュされてた藤崎翔「神様の裏の顔」を読んだ。なんでも「横溝正史賞」受賞作品だそうです。

皆に「神様」と言われるほどの人格者であった元中学教師の通夜。
多くの参列者が訪れ、涙する。読経、焼香、喪主挨拶、通夜ぶるまいと進んでいく中で、「関係者」のモノローグの形で故人との思い出が語られていく。

「すばらしい人だった」「たくさん助けていただいた」「ここまで導いてくれた」――そんな思い出の中に、少しばかり違和感が残る。

まさか先生が。参列者の心の違和感は、ひとりぶんのモノローグごとに読者の中に溜まり積み重なり、そして次第に像を結んでいく。

「うわっ」

もう単なる状況証拠ではすまされない。まさに神様の裏の顔。いや、神だからこその所業なのか。

ん?・・・まてよ。関係者が控室に集まったところで今度は僕の中に違和感が。その違和感はやがて登場人物の中にも。

何しろ「本人不在」なのだ。それなのにこれだけ話がスリリングに二転三転していくとは!
裏どころか裏の裏の裏!!

そしてラスト、本当の神様の正体とは――。

違和感を違和感としてわかりやすく提示しながらその脇に目立たないように伏線を配するというミステリとしてのどんでん返しの快感?とは別に、本人不在で進められる「欠席裁判」ってやっぱり恐ろしいと感じた。そして「本当のことを話します」は「すべて話します」とはイコールではないという、人間の言葉の怖さも。

いやいやまいった。

・・
・・・

実は主要登場人物の中にひとりだけ、本当の意味での関係者ではなく「証言者」が混ざっている。この人物の職業と語り口が実に絶妙で、それはおそらく作者自身のキャリアに関連しているのだろうということを読後に知る。

作者は元芸人さん。なるほどこういうちょっとシュールなコントはありそうだ。
クスクスと笑えるようなところも多いしね。

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