『ご乗車になりましたら中ほどまでお詰めください』
人波に押されて、車両の奥へ奥へ。今日のポジションは車両と車両の連結器の横、重たい手動ドアに寄りかかるように立つ。
電車はほぼ満員。座席はもちろん、つり革前に立てない人もいる程度の混雑具合。
ちょうどつり革のあたりに降車する人たちの列が形成され、整然と乗降ドアに向かう。僕もその最後尾につく。
一方降車しない人たちは身体をくねらせるようにしてその流れに巻き込まれないようにしている。
その人たちとぶつからないようにと、ふとその人たちの顔を見た。こちらを向いている複数の人たちの目が、いっせいに空いた座席に注がれている。
ハンターの目!!!
流れに逆らってまでこの座席を奪いにいくのか。
流れの中に一瞬の隙を見つけるのか。
あるいは流れが収まるギリギリのタイミングまで待つのか――。
その表情はみな同じようにほとんど消えている。だがその眼だけがあやしく光る。
いくつもの視線が1つの獲物を鋭く捉えて離さない。
怖いよぉ。
最近は無秩序に突進してくるのはおばちゃんよりもオッサンな気がする。
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