2025年5月23日金曜日

翳りゆくひと。[094]


[094]

マンションからわたしの自宅に送ったダンボールの中身の整理も少しずつ始めている。
特に「後で確認しよう」とよく内容も確認せずに放り込んだ書類の数々だ。

役所からの通知や保険会社からの連絡もあるし、よくよく見たらただのダイレクトメールもあるし。とにかくひとつひとつ確認、分類しながら整理をしていく。

「めんどくせぇなぁ」

年金、医療、介護、税金といった公的なもの。銀行、証券、保険、不動産といった資産関係のもの。公共料金やクレジットカードといった支払いに関するもの。

それらをすべてひと目でわかるように、そしていつでも確認できるように、クラウド上のスプレッドシートに入力していく。

「めんどくせぇなぁ」

こうした作業をしながら思う。今やってるのは、マサさんとあっちゃんふたりの人生をトレースする作業なのではないかと。
考えてみれば当然のことだが、他人の人生をトレースすることなんてできるわけがない。強い実感としてそう思う。
逆に言えば、わかる範囲でしかできないし、その結果として「今の概要」が見えてくれば十分ということだ。
そう自分に言い聞かせながら整理を続けていく。

さて、マンションから回収した大量の小銭である。
本当は運送で送ってはいけないものだとは承知しているが、あまりにも重いということもあって、こっそり荷物の中に入れておいた。
これも整理をしなければならない。

混ざっていた海外のコインを取り除き、500円、100円、50円、10円、5円、1円と分類をしていく。以前ならそのまま金融機関の窓口に持っていけば口座への入金ができたのだが、現在はそれなりの手数料が必要になる。1円玉100枚を入金するのに手数料を取られてはたまらない。
少しずつATMまで持っていって、投入可能な50枚ずつ、わたし自身の銀行口座に入金する。硬貨の取り扱いは平日しかできないので、仕事の合間に。
50枚を一気に投入すると、ATMの内部でかちゃかちゃとカウントする音が聞こえて、終わるまでにすごく時間がかかるので、駅前の1台しかないような機械だと占拠してしまうことになって迷惑になる。わざわ大きな支店まで出向いての「作業」だ。

何日かそれを繰り返して、ようやくすべて口座に入金することができた。
枚数は1,000枚を超えた。金額は3万円ほど。

このお金の一部で、回らない寿司屋で折詰を作ってもらった。そして息子たちと食べた。

「さすがにうまいねぇ」

このぐらい使わせてもらってもバチは当たらないだろう。

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